自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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流行、廃り、その2

2015/01/30

先日、あるスペイン料理店で食事をして、会計をしているとき、その店のオーナーから「珈琲、流行ってますよね」と言われた。
たしかに、今はちょっとした珈琲ブーム。

スペシャルティコーヒーという言葉も一定の浸透を遂げ、エスプレッソにラテ・アート。
味わうだけの飲料から、見て楽しむ要素も加わり、バリスタという言葉が一人歩きしている感も否めない。

そして、最近は「サードウェーブ」という、ある意味私たち日本の自家焙煎店が数十年前から実践していたことを参考にしたアメリカ人が、よりプロフィット優先に作り上げたものが、日本にも逆輸入されはじめている。

日本人のガンコオヤジが「こだわりのコーヒー」として売っていたら、一部のマニアしか集まらなかったのに、アメリカ人がファッショナブルに薀蓄を並べ、マスコミがサードウェーブともてはやしたら、若者が行列を作る店になる。

しかし実際に、そのアメリカで流行っているコーヒーの豆を入手して、豆を挽いて湯をかけると、全く膨らまないのみならず、単に酸っぱいだけのものだったりする。

つまり、「珈琲の楽しみ方が多様化した」と言えばもっともらしいが、「珈琲がファッションと化している」とすれば、流行の波次第で、いずれ廃って行く危険性を孕んでいるように思えてならない。

これまでも、いろいろな食べ物がブームとなり、一時はどこを見ても、それが売られ、食べられ(飲まれ)ていたが、今ではほとんど見かけないというものも少なくない。

ただ、珈琲について言えば、一時のブームと言うより、すでに定番ドリンクであったものが、より幅広く多面的に脚光を浴びていると言えるので、かつて流行った一発ものとは違う次元かもしれない。

少し前に、ある全国誌の取材を受けた。
珈琲特集ということで、ライターとカメラマンが来て、写真も撮り、取材もして行ったのだが、最初に打診を受けたときは、見開きで載せたいと言われた。
しかし、スペシャルティコーヒーについて質問を受けた折、私が思っていることを正直にこたえた結果、掲載は1/4ページになってしまった。

見開きで取り上げられている店の記事を読むと「これからはスペシャルティーの時代!今までの自家焙煎は廃れていく」といったことを述べているではないか!

まぁ、その取材の趣旨をよく理解せずに、「スペシャルティーを出すと、常連のお客様は、最初の数回こそ注文して下さるが、最終的には、いつものブレンドに落ち着く。やはり、珈琲が日常の飲み物になっている人にとって、スペシャルティーは、飽きがくるようで、本当の珈琲好きは、しっかりとしたボディと珈琲らしい苦味やコクを好む傾向にある」と言ってしまったことが編集部には気に入らなかったようである。

メディアというものは、真実や本音ではなく、自分たちがリードして流行らせたいものを流行るように誘導するのが仕事。
そういう点で、現在のコーヒーブームは、メディアが作っている感をどうしても拭いきれない。

そして、メディアは次の獲物を見つけたら、今までもてはやしていたものは、あっさり切り捨てて、次のものを大々的に取り上げることは、過去の歴史が証明している。

最近、次々と新しい珈琲店が増え、また、開業を希望している若者も多いように見受けるが、果たしてメディア主導のブームが去って、今までより一回り市場規模は大きくなるであろうが、少なくとも流行のファッションとしてコーヒーが飲まれなくなったとき、どれだけの珈琲店が生き残れるのだろうか?

冷静に今の市場を見て、まだしばらくは珈琲に高い関心が集まる要素は少なくない。
そして、缶飲料ではない、レギュラーコーヒーの市場は、確実に大きくなっているし、それが一気にしぼむとは思えない。
しかし、長期的に見て、現在コーヒーに興味を持っている人が、次にマスコミが流布するブームに乗り換えない保証はどこにもない。
そうなったとき、分母と分子のバランスが崩れてしまうことは容易に想像がつく。

商売をしている以上、時流に乗って、ある程度大きくしていかなくては、守りに徹していると、取り残されてしまう。
しかし、一方で、単に時流に乗るのではなく、しっかりとその先を読んで、膨張ではなく成長していかないと、流れが変わったとき、一気に逆流に飲まれてしまいかねない。

コーヒーブームの昨今、廃りはしなくても、ブームはいつか去って行く。
きちんとそのあたりを読みながら、流行っているから飲んでいる人を追うのではなく、しっかりとお客様と向き合い、違いの分かるお客様を作って行かねばならないと、ある種危機感を抱く今日このごろ。

ちなみに、私に「珈琲、流行ってますよね」と言ったオーナーが経営するスペイン料理店は、流行り廃りに関係なく、しっかりとお客様がついている人気店。
それもすべて、オーナーの人柄であろう。
見習わなくては、だな。

と、言うことで、このパエリャが食べられるスペイン料理店については、またこんど。


「流行、廃り その3」に、つづく。

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