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カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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エチオピア関係

知らなくてもいい珈琲の話-その23【ゲシャヴィレッジ】

2021年7月11日 

知らなくてもいい珈琲の話、本来なら今回はハイブリッド種について書くはずでした。

しかし、明日より下鴨本店18周年記念のプレセールとして「エチオピア・ゲシャヴィレッジ・ゲイシャウォッシュド」を18周年にちなんで通常価格より18%OFFで販売するので、そのゲシャヴィレッジについて書こうかと思います。

まず、ゲイシャ種は、「ゲシャヴィレッジ」で発見されたことから、地名が品種の名称になったことは多くの方がご存知でしょう。

発見されたのは80年以上前ですが、非常に生産性が悪くコスタリカにある農業研究センターで細々と研究されている程度でした。

しかし、2004年にパナマのエスメラルダ農園のゲイシャがベスト・オブ・パナマのコンテストで絶賛され、当時のオークション落札金額の史上最高額をたたき出し、一躍有名になり、スペシャルティコーヒー業界では「ゲイシャ前・ゲイシャ後」と言われるほど、世の中のコーヒー全体に与えた影響は計り知れません。

ちなみに、2017年のパナマにおけるゲイシャの最高落札額は601$/lb(15万円/1kg)が記録されています。

エチオピアでは、ゲイシャ種の多くがナチュラル精選(チェリーを果肉がついたまま天日乾燥する方法)されていますが、今回は、少量だけ作られている、よりクリアで繊細な香りのウォッシュド(水洗により果肉を除去する方法)の逸品をご用意しました。

ヴェルディは初めてゲイシャ種を販売したのは、今からもう10年以上前で、その当時は「芸者と何か関係あるの?」とよく聞かれました。

そんなゲシャヴィレッジは、どのようなところにあるかと言うと、エチオピアの中西部に位置する旧イルバボール州(1995年に民族ごとの州編成に伴い東西が分かれた)現オロミア州の険しい山奥にあります。

私がエチオピアへ行った折も、途中の道路コンディションションが非常に悪く、四輪駆動車でもタイヤが泥に埋もれて、周りの住民たちが総出で車を押して進むということがありました。

しかし、ゲシャヴィレッジへはそんなレベルではなく、農園からトラクターに出動してもらい、四駆車の推進力にプラスでトラクターのけん引がないと進めないというほどの悪路の奥にあります。

ゲシャヴィレッジ農園のあるゴリゲシャの森は、概ね標高が1900m以上の高さにあるため、常態的に霧が発生しており、 Misty Valley とも言われています。

そんなゲシャヴィレッジ農園は、8つの区画に分かれており、区画ごとに日照や風通し、シェードツリーとなる木の茂り具合などが違うため、各々の区画ごとに異なる品種が植えられています。

ゲシャヴィレッジ農園で栽培されている品種は以下の3つ。

● Gori Gesha

ゴリゲシャの森にちなんで名前が付けられたゲイシャ種。

耐病性、収穫時の生産性、熟度などのバランスが良い(と言っても、他品種より生産性は悪い)のエチオピアにおけるゲイシャのスタンダード。

● Gesha 1931

ゴリゲシャより糖度が5%ほど高めながら、成長のスピードや熟す速度など収穫時の生産性は悪く、より高値がつくものの生産量は少ないゲイシャ種

● Illbabor Forest

JIMAの農業調査局がイルバボールの森で発見した品種(74110 と 74112)の中でも耐病性に優れた株を掛け合わせて作った品種。

もともとは、原生種だったが交配により糖度が増し、素晴らしい風味を持つ品種となった。

2020年にヴェルディで販売したところ、30キロが1週間持たずに売り切れるほど、いまだに「イルバボール、もう入らないの?」と聞かれる伝説的美味しさの珈琲。

今回の豆は、ゲシャヴィレッジの中でも北部に位置するShaya 区画で作られている Gori Gesya のウォッシュドを仕入れました。

Shaya 区画の名前は、ゲシャの伝統部族メアニット族の酋長の名前からとられています。

標高は1926~2011mと非常に高く、北に向かって傾斜した山の斜面で作られています。

そのため高いシェードツリーは少なく、刻々と角度が変わる日光を浴びてスピーディーに熟度が増していったチェリーをウォッシュドで精選しています。

エチオピアにおいて、ここまで細かく栽培地域が分かっているものは非常に稀です。

ぜひこの機会に本家本元のゲイシャをお楽しみくださいませ。

※ 今回の画像・資料は、Zephyr Japan CEO 橋本様から頂いたものを使わせて頂いています。

知らなくてもいい珈琲の話-その7【エチオピア-Part 5】

2021年2月28日 

いよいよエチオピアも本当に最終回。

「次のエチオピアの話、楽しみにしています」といったことを2名のお客様から言われたので、少なくとも2名の方はこれをお読みくださるはず。

今回も長くなるので、エチオピアについてのどーでもいい話など読んでいる暇はないという方は、ここで退出されることをお勧めします。

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さて、10数年前は、相場が下がっていようが、安くしか売れまいが、早く倉庫にある豆を売るように言っていたエチオピア政府が、2019年には「ECXのオークション落札価格より安く売ってはならない」という法律を制定したという矛盾。

10数年前の逮捕劇は、経済の理論に反していると思われましたが、今日「安売り禁止法」ができるに至った経緯を見ると、やはり経済の論理が正常に行われたので、そのような法律の制定に至ったという、一言で語ると、なんのことやら分からない説明になります。

皆さんは、もし仕入れ価格より安く売らなくてはならないことになったら、どうするでしょうか?

商品の販売で利益が出ないのであれば、それ以外のもので利益を上げようとするのが道理でしょう。

では、珈琲豆という商品で利益が出ない状態において、輸出業者はどうやって利益を上げようと考えたか、そこには前回も書いた通り、エチオピアという国の事情が大きな意味を持ちます。

エチオピアは建設ラッシュ、しかし、建築資材や機器類は全て輸入に頼っている。

しかし、外貨が不足しており、それら輸入資材を購入したくても購入できないので、建設が途中で頓挫して先に進まない状態。

こういう状況だと、建築資材や建設機器の相場は完全な売り手有利に働きます。

極論、モノがないのだから、建築資材などは売り手の『言い値』が『相場』になります。

勘のいい方ならもうピンときたはず。

コーヒーの相場で損をしたコーヒー輸出業者は、建築資材の相場で儲けようと企んだわけです。彼らの儲け方はこうです。

例えば、コーヒー豆の落札価格が 1,000円 / kg だったとしましょう。

通常なら、輸出業者は各国の輸入業者に1,300円 / kg で売れたとしましょう。

もし、落札したコーヒー豆の量が 1トンなら

売価 1,300円 - 仕入価格 1,000円 × 1,000kg = 300,000円 なので、30万円の利益が出ます。

それを 700円 / kg で1トン売ったら

売価 700円 - 仕入価格 1,000円 × 1,000kg = ▲ 300,000円 なので、30万円のマイナスになります。

しかし、コーヒー豆の取引としては赤字でも、そこで得た70万円で、70万円分の建築資材を購入して、150万円で売れば

建築資材の売価 1,500,000円 - 資材の仕入れ価格 700,000円 - 豆の赤字300,000円 = 500,000円

となり、普通に豆の輸出をするより20万円利益が多くなります。

そうなると、相場とは関係なく輸出業者は手っ取り早く外貨を獲得するために、輸入業者に安く豆をたたき売ります。

そこで得た外貨で、建築資材を輸入して建設業者に『言い値』で高く売れば、楽して儲かるということになります。

本業の豆で利益を出そうとしたら、頑張って付加価値を付けて、より高値で輸出業者が購入するよう仕向けなくてはなりませんが、誰か一人でも相場より安く売る業者がいれば、買い手はその売り手の元に集まります。

そのような負の連鎖によって、エチオピアのコーヒー豆は本来あるべき価格よりも安く流通するようになってしまい、同時にエチオピアの国内では、相場より高い建築資材しか流通しなくなってしまうという悪循環に陥るわけです。

元はと言えば、真っ当に相場で利益を出そうとしていた輸出業者をたきつけて、早く外貨を獲得するため損してでも売るよう促したところ、それによって不必要に建築資材の高騰を招いてしまったと言っても過言ではなく、そのあたりが経済政策の難しいところかもしれません。

そんなエチオピア産のコーヒー、風味の面において、中米のスペシャルティと比べても決して劣っていない、と言うよりも、中米がどんなに頑張ってもエチオピアの味は決して出せない唯一無二のものです。

私の個人的な見解としては、エチオピアの豆は、そのクオリティを考えるとコーヒー全体の価格としては安すぎると思うのですが、その原因がこのような事情によるものだと考えると、今回の法律が制定されたことにより、近々消費国におけるエチオピア豆の販売価格は暴騰するのではないかと案じているところです。

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さて、エチオピアのコーヒーについて、私たちは農園を回った最後に輸出前の最終工程である「ドライミル」の工場建設現場を見せてもらいました。

エチオピアで私たちがお世話になったのは、エチオピア国内に多くの農園とウエットミル(精選工場)を持ち、輸出も自らしている METAD社。

通常、農園がウエットミルとドライミルまで持って輸出まで一貫して行うことは少ないのですが、エチオピアという国で、クオリティをしっかり維持して、まさにシード to カップまで責任を持つには、生産と精選、輸出まで一貫する必要があるということなのかもしれません。

METAD社の社長

アディスアベバから車で1時間ほどのところにある精選工場(ドライミル)

豆の比重選別機

ベルトコンベアの両脇に人が並んで、ハンドピックをするための最終選別ライン

巨大な精選工場

METAD 社のウエットミルは、場所によって地域の零細農家からチェリーを買い付けて一つのロットを作ると言うこともしています。

しかし、仕入れにおいては厳しい基準を設け、しっかりとグレーディングされます。

彼女が、零細農家が持ってきたチェリーの可否を判断する責任者。

若く美しい方でしたが、チェリーを見分ける眼力は、この地域でも飛びぬけているとか。

METAD社の社長に、どうしてこんなに大きな投資をしてまで、ドライミルを作る気になったのかを聞いてみたところ、こういう答えが返ってきました。

本当に良い品質を確保するために、ドライミルは大きな役割を持っている。

同時に、エチオピアでは、輸出業者がインポーターやバイヤーに送るサンプルをドライミルで見かけた良い豆から抜き取って(要するに他人の豆)送り付けてしまうことも珍しくない。

そういう不正が起きないよう、自社のものは自社が責任をもって全て管理する必要がある。

エチオピアに限らず、他の一部の国の豆でも、サンプルは素晴らしいのに、いざ入荷した豆を見て愕然とすることが過去に何度かあったのは事実です。

「もしや」とは思っていても、実際にそういうことが行われていると聞いて、ショックだったのと同時に、コーヒーの世界においては、未だにそういうリスクがあることを知っていないといけないと感じました。

ただ、そんな中においても、こうして良いものを追求している人々がいることも事実です。

私たちは、より良いものを適正な価格で仕入れて、より良いコーヒーをお客様にお楽しみ頂けるよう努力しなくては、と、強く思う瞬間でした。

エチオピアの農園は、標高2,000メートル以上にあることも多く、朝は雲の中にいます。

農園での目覚めは、鳥の声に起こされ、外に出ると薄雲の中から日が差してくる、幻想的な朝でした。

そして、日没の太陽は、日本で見るものと比べとても大きかった!

私が最も信頼するコーヒーインポーターのH氏は、こう語ります。

「アフリカに来るといつも感じることに、自分の精神面が健全であれば、アフリカと言うところは、とてつもないパワーをくれる、けど、少し精神的にネガティブになっていたら、全て吸い尽くされてしまうほどパワーを奪われる」

この国のコーヒーが持つ、とてつもなポテンシャルと、それを活かせない国の事情。

ものすごく素晴らしい味のものが出てきたと思ったら、翌年は全くの空振りに終わることもしばしば。

しかし、どんなに酷いものをつかまされても、それを上回る期待感が、この国のコーヒーにはあります。

これからも、お客様に最高のエチオピアを提供できるよう、日々探求していきたいと思います。

エチオピア編 ひとまずおしまい。

知らなくてもいい珈琲の話-その6【エチオピア-Part4】

2021年2月21日 

知らなくてもいいエチオピア事情について、ついに第4回目。

一応、今回で完結の予定です.

前回はエチオピアの輸出業者が、10数年前にNYの相場が大きく下落したとき、自社の倉庫にストックしていた珈琲豆を相場が上がるまで売らずにいたら逮捕されてしまったということを書きました。

経済の常識から言うと、これはとんでもないことで、国家権力が企業の利益を損ねようとしていると言うことになります。

なぜそんなことになったのか、アディスアベバの街を見ると、おぼろげにわかってきます。

前回書いた通り、アディスアベバの街は建設途中の建物が多く、工事が再開されるのかどうかすら分からないような状態で放置されているものも少なくありません。

これは、単に国が貧しいから工事が進まないというだけではなく、もっと根本的な事情があるのです。

下の画像は、外務省のホームページにあるエチオピアの基本データです。

(文字が小さくてすみません、拡大してご確認ください)

エチオピアの主要産業は「農業」で、穀物・豆類に続いてコーヒー、油糧種子(菜種やゴマなど植物油の原料となる種子)などが並びます。

そして、輸出入の商材を見てみると

コーヒーを筆頭に、油糧種子、切り花が主要輸出品目。

逆に、機械類や電化製品などは輸入に頼っていることが分かります。

そして、このデータだけでは分かりませんが、エチオピアは燃料資源に乏しく、また鋼材などもとれないため、建築に使われる機械はもちろん、資材なども輸入に頼っているのです。

そこで問題になるのが、建設材料や建設機器を購入するためにはドルが必要になると言うことで、ドルを得るためには輸出しなくてはならないわけです。

もし、貴方が株をやっていたとしましょう。

安いときに購入して、株価が上がったら売る、これは当然のことです。

しかし、それは潤沢に(潤沢と言えなくても、困らない程度に)キャッシュがあるからできることで、明日食べる食料を購入するお金すらなければ、購入価格より株価が安くても売らなくては生きていけなくなるわけです。

これをエチオピアという国の経済事情に当てはめて考えると、建設したくても資材を購入するお金がなくて、途中で放置しているビルが立ち並ぶ中、相場が上がるのを待つ余裕のない政府は、利益が出なくてもいち早く外貨を獲得するために相場と関係なく豆を売るよう指示したということです。

しかし、国のお財布と輸出業者の懐具合には温度差があり、損してまで売る必要に迫られていない輸出業者は、売り控えていました。

そこで政府が強権発動で、輸出業者の経営者を逮捕することで、とりあえずの外貨を獲得するという戦法に出たというのが、このへんてこな逮捕劇の現実だったようです。

ところで、「主要産業」の図の中に緑で囲った部分があります。

ここには「チャット」と書かれていますが、これを見て私は思わず目が点になってしまいました。

このチャットとは、実はエチオピアはもちろん東アフリカで今問題になっている麻薬に準じる葉っぱなのです。

どんなものかと言うと、下の写真で私が持っている葉っぱです。

この葉っぱを噛むと、高揚感が出てきて、俗にいう「ハイ」になれるとのこと。

WHOは乱用すると依存を引き起こす薬物として指定、アメリカやヨーロッパの多くの国では非合法薬物と認定して禁止しています。

が、エチオピアを中心とする一部のアラビア諸国では紀元前から使用されてきたという歴史もあり、宗教的儀式にも用いられていたことから禁止薬物には指定されていません。

なので、私もちょっと嚙んでみましたが、全くハイになれず・・・

聞けば、エチオピアの中でも愛用者はチャットを常時噛み続けているそうで、私が持っている一束くらいを噛んでいたら、ハイになれるそうです。

まぁ、ちょっとやそっとでは効果はないらしいようで。

でも、このチャットは街を車で走っていても、ちょっとスピードが落ちたり止まったりしたら、売り子が走ってきて窓をたたくし、ガソリンスタンドでも若いお姉さんがカゴに入れて売りに来ていました。

昔々、麻薬なんて概念がない時代から噛み続けられていた「チャット」

ある意味、エチオピアの人にとってはコーヒーとチャットは同類だったのかもしれませんが、紆余曲折はあったものの、コーヒーはその後全世界で流通する一大産物となりました。

一方のチャットは逆に虐げられた存在になっています。

そんなことを考えていたら、パプアニューギニアでどちらかと言うと上流階級ではない人たちが一日中「バターナッツ」を口に含んでいたことを思い出します。

このおじさんの口の中、けっこう赤くて歯には赤いアクのようなものがこびりついていますが、バターナッツと石膏を口の中に入れて噛んでいたら赤くなるのです。

私たちにも「どうだい」と売りに来ましたが、丁重にお断りしました。

それにしても、この集団の人たちの口の中は、みんな赤かった。

ただ、外国人が宿泊する高級ホテルでは、バターナッツが禁止されているところが多かったように思います。

聞けば、口の中が赤いとヴァンパイアを見たような気にさせてしまうことと、バターナッツと石膏を長く噛んでいると弱い幻覚作用があるからだそうです。

パプアでも、古くからバターナッツを噛む風習があったと聞きますが、もしかすると口の中を真っ赤にしている原住民を見て、欧米の人は必要以上に「人食い」を思い浮かべ、パプア=カニバリズムというのが有名になってしまったのかもしれない、なんて思ったり。

まぁ、そんなわけで、ちょっとエチオピアのチャットとパプアのバターナッツは似ていると思ったわけです。

そんなチャット(イエメンでは「カート」と言う)今やアフリカのエチオピア近隣諸国でも禁止の方向に進んでいます。

その大きな理由の一つは、薬物としての怖さ以上に、コーヒーや穀物を植えていた農園がチャット畑になることだそうです。

実のなる農作物は、せいぜい年に一度か二度の収穫、一方チャットは葉っぱを切れば、またすぐ生えてくるので、年中収穫できるから、穀物やコーヒーを作るより楽。

しかし、チャットは土中の成分を多く吸収するため、一度チャット畑にしてしまうと、次に農作物を植えようとしても土がダメになってしまっているそうです。

エチオピアの人に、先のことを話してもなかなか通じないわけで、将来の土壌より明日の現金が最重要。

私も、どちらかと言うと薬効の恐ろしさより、土壌破壊の恐ろしさの方が大きいように思いました。

話がそれてしまいましたが、本題に戻ります。

10数年前は、利益が出ようが出まいが、早く売るよう促した政府が、2019年の11月21日、まさに私がエチオピアの農園視察をしているタイミングで、次のような法律が制定されました。

ECXのオークションで落札したコーヒー豆は、落札価格より安価で売ってはならない。

このニュースを私はアンベラの農園で聞いたのですが、それじゃぁ10数年前の逮捕劇はいったい何だったんだ?!ということになります。

そのことについて書こうと思ったのですが、ただでさえけっこう長くなってしまったうえ、この件について書きはじめたら、もっと長くなってしまうので、本日が最終回のはずだったのですが、もう一回だけエチオピアについて書くことにいたします。

そんなわけで、次回は上記法律がどうして成立したのか、ということと、エチオピアの総括をしたいと思います。

長文にもかかわらず、ここまで読んで下さった方には感謝申し上げます。

チョイス

2021年2月5日 

今朝も晴れていたので寒いながらも空はけっこう明るかった。

さて、先日ちょっと無理を押して東京へ行ってきたのだが、その折にかき集めてきた豆が 7種類。

全てエチオピアで、イルガチェフとグジのウォッシュド&ナチュラル。

商社にサンプルをお願いしたら、だいたいは200~300グラムしかもらえないのだが、ヴェルディの焙煎機は最低でも1キロ以上の豆でないと回らないので、私が直接乗り込んで豆をもらってきたような訳である。

こうしてみると、大した量ではなさそうなのだが、これをリュックに入れて背負って東京の街を歩くのって、けっこう大変だった。

そんなわけで、全部焙煎して、味見をしてみた。

同じエチオピアのイルガチェフでも、けっこう味が違ったり。

先日、ある商社の担当者が「最近、グジが人気と言っているけど、肌感覚では大したことがない」と言っていたのだが、このグジを飲んでみると、非常に上品で良い豆だったり。

今年のクロップが入ってくるのは早くて9月。

それまでの間、どの豆をヴェルディのエチオピアにしようか悩むところ。

個人的には、今回調達したウォッシュドを全部混ぜたものが何とも言い難く美味しいのだが、毎回3種類を焙煎してブレンドとは行かないからなぁ・・・

飲みながら、エチオピアの大空の下、アフリカンベッドで天日乾燥されるチェリーを思い出した。

個人的には、私がエチオピアへ行った折に泊まった農園ALAKAのものを使いたいのだが、こちらの品種「74140」は、俗にいうバーガンディー種で、チェリーが徐々に色付いていくのではなく、ある時点から急激に赤くなるため、収穫時期が難しいこと。

そして、このALAKAの豆は前々年のものから見ているのだが、2年前より良くなっていることを考えると、やっと品種が土壌とマッチングしてきたように思える。

そんなわけで、思い入れはあるがALAKAは来年以降かな?と。

そんなこんなで、ウォッシュドはMETAD社のウォッシングステーションであるGOTITIのもの。

ナチュラルはイルガチェフで安定した品質を誇るウォッシングステーションWOTEのものを使うことに決定。

グジのBENTI NENQAに後ろ髪ひかれつつ、こちらは深煎りで使おうかとも。

エチオピアという国のポテンシャルの高さ、そして素晴らしさを再認識した飲み比べだった。

そして、昨日より販売を開始した ヴィンテージバレルコーヒー ですが、仕入れた20キロのうち、早1日で13キロがなくなってしまいました。

コーヒー通販の売れ行きランキングも、なんと初登場で不動の1位「ヴェルディブレンド」を抑え、堂々の1位!

来週一週間、もつかどうか・・・

ご希望の方は、お早めにお求めください。

ちなみに、明日の午前中に私が焙煎するまで下鴨本店では品切れ状態です。

お求めは午後3時以降でお願いいたします。

知らなくてもいい珈琲の話-その2【エチオピア-Part 1】

2021年1月17日 

今朝はわりと暖かかった。

と言ったら語弊があるので・・・そんなに寒くなかった。

先週から日曜日は珈琲について、ちょっとだけ深めの話を書くことにして、次回はエチオピアの豆やトレーサビリティーについて書くと言ってました。

そこで、私がエチオピアへ行った折、あぜ道を走行中の車の中で聞いた話をメモしていたノートを読み返すと言うか、解読しながらどのように書こうか考えてみました。

その結果、そうとう話を端折っても正直1回や2回では終わりそうになかったので、これから何回かシリーズでエチオピアのことについて書こうと思います。

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さて、珈琲の生産国は多数ありますが、究極を言えば、ブラジルとエチオピアがあればなんとかなると私は思うのです。

ブラジルは言わずと知れた世界最大の産地、そしてエチオピアはアラビカ種誕生の地。避けては通れません。

そんなエチオピアですが、日本ではなぜか「モカ」という名称で取り扱われることが多い、と言うか、ほとんどのお店はエチオピア産の豆を「モカ」と呼んでいます。

しかし、モカはイエメンの港の名前で、スエズ運河開通前はエチオピアの豆とイエメンの豆が、モカ港から船積みされて運ばれていたことから、昔々はエチオピアとイエメンの豆を「モカ出港の豆」として取り扱われていました。

その名残かもしれませんが、イエメンの人からすると、自国の港の名前を他国の生産物につけさせたいとは思わないでしょうし、エチオピアの人からすると、どうして他国の港の名前で呼ばれなくてはならないと思うのではないでしょうか。

新潟県の魚沼産コシヒカリが欧米で「釜山」なんて呼ばれていたら、新潟の人は怒ることでしょう。

モカ以外で言えば、ブラジルのサントスも港の名前であって、「セラード」だとか「カパラオ」(マッタデミナスとエスピリトサントの州境近辺)といった産地詳細ではないのですから、「サントス」が味や品質を表しているものではないのは自明こと。今の時代港の名前で珈琲を呼ぶのはいかがなものかと思います。

さらに、日本の3倍もある国土のエチオピア内でも産地は多数あり、各々の特徴が違うのですから「モカ」とひとくくりにして良いわけがありません。

そこで、まずはエチオピア国内の産地についてお話ししたいと思います。

エチオピア国内での生産量を見ると、オロミア州(地図上の緑の部分)で全体の67.45%が生産されています。

そしてSNNPR(Southern Nations Nationalities and Peoples Region)=南部諸民族州(地図上のピンクの部分)が全体の30.52%を生産していますので、この2州だけでエチオピア全体の98%を生産していることになります。

オロミア州の中には【リム】【ジマ】【リケンプティ】【グジ】【ハラー】などの産地があります。

そして、SNNPRには、日本でも人気の高い【シダモ】【イルガチェフ】【カッファ】などが含まれていますが、シダモ(現地風に言うとシダマ)は2019年に州への格上げを要請、現在はシダマ州となっています。

また、イルガチェフやグジはシダモの一部と言われることも多いのですが、後に説明する ECXの管理上、以前はシダモの括りに入っていたため、シダモの延長線上に考えられていましたが、(下図の[旧シダモ地方]参照)地域的には、同一地区と呼ぶには無理があります。

そのエチオピアの産地分布は下のようになっています。

地域ごとに風味特性も違い、また精製方法も特色がでてきます。

● 現シダマ州

日本でも古くから有名な産地。

標高1,500~2,200mで、ボディと酸味のバランスが良く、上質なものはフローラルな香りが楽しめます。

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A : イルガチェフ

現在日本で最も人気のある産地。

標高1,750~2,200mで、ブルーベリーのような風味とフローラルな香り紅茶のような甘みが印象的です。

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B : グジ

近年人気が出てきた産地。

なぜか、グジの生産量よりも、日本で流通している「グジ産」の豆の量が多い不思議な豆。

そういう点からも、本当のグジの味はどこにあるのか分かり辛いが、ベリー系のフレーバーが強いのが特徴と言われています。

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C : カッファ

コーヒー発祥の地とも言われ、「カフェ」の語源ともされています。

ナッツ系の風味が強く、ボディはしっかりとしていますが、シダモやイルガと比べ華やかさには欠けます。

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D : ジマ

標高は比較的低く1,200~1,800m、ナチュラルのシェアはエチオピアでトップです。

ナチュラルフレーバーからくる酸味とボディのバランスが良いのが特徴です。

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E : リケンプティ

標高は1,400~2,200mで、日本で目にするものはG4(グレード4)が多いという印象です。

高グレードのものは、フルーティーさが特徴です。

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F : ハラー

標高1,500~2,200m、シダモに次いで日本でも人気が高い産地。

俗にいう麝香のような「モカフレーバー」が印象的でイエメンに近い風味を持ちます。

精製はナチュラルがメインです。

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G : ゲシャ

今や高級コーヒーの代名詞となった「ゲイシャ種」発祥の地。

ナチュラルで精製されます。

4輪駆動車では行くのも難しく、車の前を耕運機で慣らしながら進まないとたどり着けないほどと言われています。

次回エチオピアへ行った折は、ぜひ訪問してみたい産地です。

パナマ産のゲイシャと比べると、独特の香りは弱めですが、レモンティーのような風味が印象的です。

どうして自生していた地域より、他国のパナマの方が高品質なものになったかと疑問に感じる方もいらっしゃるかと思います。

ゲイシャ種は根が短く、また非常に多くの水(降雨)を必要とします。

また、パナマでもゲイシャを多く栽培しているボケテ地区はバル火山からの山麓、火山土の養分豊富な土壌であるため、原産国の自生地域より、むしろゲイシャ種には適していたものと思われます。

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こうして見ると、エチオピアの産地はどこも標高が高いことが分かります。

中米では標高でグレード付けをすることが多いのですが、例えばグァテマラなどは最高等級のSHBが標高1,350m以上と規定されています。

エチオピアで1,350mは最も低い地域のもの並です。

ただ、エチオピアは首都のアディスアベバから産地へ向かう道中、ほとんどが標高2,500m以上で、弱い人は軽く高山病にかかるほど。

こういう産地特製も他に類を見ない味わいに欠かせないものかもしれません。

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ここまででもずいぶん長くなってしまいました。

次回は、エチオピア産豆の流通についてお話しようと思ったのですが、その前に、様々なことの前提となるお国の事情などを書きたいと思います。

で、そんなエチオピア、ヴェルディでは3種類のエチオピア豆を販売しています。

イルガチェフ・G1・ウォッシュド 中煎り

イルガチェフ・G1・ナチュラル 中煎り

イルガチェフ・G1・ウォッシュド 深煎り

よろしければお試しください。

う~ん、それにしても、このペースだと何回連載になることやら・・・

では、また来週。

知らなくてもいい珈琲の話-その1【アラビカ種発祥】

2021年1月10日 

今朝も寒かったですね。

でも、昨日は風が強くて、特に川沿いは風を遮るものが何もないので恐ろしく寒く感じました。

今日は、昨日と比べると風もなくてそういう点での寒さはなかったものの、日の出前の底冷えは、外に出た瞬間歩くのを躊躇うほどでした。

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ところで、今まで土曜日は日記の定休日でしたが、芸大店長の山下が土曜日の日記を担当することになったので、これからは休みなくアップされる(はず)ことになります。

そこで、日曜日は私が珈琲のことについて、ちょっと深い話を何か一つ書こうかと思います。

でも、内容的には知らなくても全く問題なく珈琲を楽しめる、けど、知っていたらちょっと物知りになった気分になれるというものにしようと思うので、題して「知らなくてもいい珈琲の話」第一回目は「アラビカ種の発祥」について。

ただ、プロに教えるための内容ではないので、かなり簡略化して書きます。

きちんと勉強している方が読んだら、突っ込みたくなる部分もあるかと思いますが、あえて簡単に説明しているので、そのあたりはご了承ください。

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コーヒーの品種について語られるとき、よく「三大原種」と言う言葉が出てきます。

【arabica(アラビカ)】【robusta(ロブスタ)】【liberica(リベリカ)】の3種類を指す言葉です。

ただ、正確に言うと【robusta】は【canephora】に属する品種なので、本当は「canephora robusta(カネフォラ ロブスタ)」と言わなくてはならないのですが、多くの生産国では単に「ロブスタ」と言っているので、それが汎用語となっています。

そんな中、インドネシアと並び、ベトナムに次ぐカネフォラ生産国であるブラジルでは、カネフォラ品種のことを「ロブスタ」とは言わず「コニロン」と呼んでいます。

もし、「コニロン」という品種を見たら、それはブラジル産のロブスタ(カネフォラ)だと思えば問題ないかと思います。

また、リベリカ種はアフリカの一部で生産されていますが、その生産量は非常に少ないため、あまり出回っておらず、珈琲業界に携わる人の中でも、飲んだことのない人の方が多いかと思います。

しかし、最近ではアフリカだけではなく、マレーシアなどのアジア圏でもリベリカの生産が行われており、私は台湾へ行った折、台北の有名珈琲店でマレーシア産リベリカ種の花で作ったお茶を飲みました。

これが甘い香りとスッキリした芳香で、とても美味しかったのを覚えています。

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話がそれましたが、その3大原種の中でも酸味や香りが良いとされている「アラビカ種」について。

アラビカは、エチオピアが原産です。

その発見については2つの伝承があります。

ひとつめは、山羊飼いのカルディ少年が、赤い実を食べてハイになっている山羊を見て、自分もその実を食べてみたら、気分が高揚して元気になったことが珈琲発見とされる、所謂「山羊飼いカルディ」の伝説。

もう一つは、罪を犯したシェイク・オマールが追放の刑に処され、荒野をさまよっているときに見つけた木になっている赤い実を食べたら元気が湧いてきて、その実をもって故郷に戻ったところ、その実の効用が珍重され罪を許されたという「シェイク・オマール」の伝説。

珈琲発見にはこの二つの伝説がありますが、カルディ少年はキリスト教徒、シェイク・オマールはイスラム教徒。

どちらの宗教も、自分たちが発見したと主張したいため二つの伝説が語り継がれました。

でも、エチオピアはアフリカでは珍しいキリスト教の国だったことから、エチオピアでは、恐らくカルディの伝説が本当ではないかと思われています。

しかし、コーヒーを世界に広めたのはイスラム教徒だったことは皮肉かもしれません。

そんな、コーヒー伝搬の歴史を研究する人の中では、シェイク オマール説が有力視されていますが、そもそもシェイク オマールが本当の第一発見者だったのか、実はそれ以前にエチオピア人の間では食用されていたのではないか。

もっと言うと、カルディという少年がいたのかどうかすら定かではありません。

そんなわけで、アディスアベバの街には、カルディーズコーヒーはたくさんありますが、「オマールズコーヒー」はありません。

ちなみに、入り口には金属探知機を持ったガードマンがいて、入場時にチェックされます。

カルディーズコーヒーのみなさん。

カプチーノ。間違ってココアパウダーをひっくりかえしたようなココアパウダーの量、飲むとむせてしまいます。

そんなわけで、カルディ少年が発見したアラビカコーヒーですが、「原種」と言われるものの、遺伝子を調べて行くと、どうやら半分はカネフォラだということが分かってきました。

父方がカネフォラ、では母方は何かと言うと、今ではもう見られなくなってしまった【eugenioides(ユーゲニオイデス)】という品種が、自然交配したもののようです。

アフリカの中西部に広く分布していたカネフォラとアフリカ中東部に原生していたユーゲニオイデスが、ちょうどエチオピアあたりで自然交配して「アラビカ」が誕生しました。

コーヒーの品種は、現在主に流通しているものだけでも80種以上、少量生産されているものなども含めたら数百種類とも言われています。

それらの多くは、アラビカの中でも「ティピカ種」(アラビカ種の中でも、原種からかなり初期の段階で派生した品種)を源として、それが突然変異したものや土着品種となったもの、他のものと掛け合わせて作られたものです。

しかし、アラビカ種は同じアラビカ同士で掛け合わせた場合を除くと、カネフォラとの掛け合わせ以外は、なかなかうまくいかないというのが実情のようです。

※ コーヒーの原種は、アラビカ、ロブスタ、リベリカ以外にも多数あり、中には結実しないものもあるほど。

それは、アラビカの父親がカネフォラだからということに起因しているからでしょう。現在出回っている「ハイブリッド品種」は、ほとんどがアラビカとカネフォラの掛け合わせです。

さて、現在流通しているアラビカ種の多くは「ティピカ種」が源になっていると書きましたが、そのティピカよりも原種に近いのが、俗に言う「エチオピア在来種」

日本でエチオピア産の豆の品種を記載するときは、ほとんどが「在来種」としか書かれていません。

しかし、エチオピア在来種も実は非常に多くの種類があり、エチオピア国内では全て数字で管理されています。

そのあたりについて、書き始めたらすごく長くなってしまうのでまたこんど。

次回は、エチオピア在来種について、そしてエチオピア産の豆のトレーサビリティーについて書きたいと思います。

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