最近トシのせいか、毎朝必ず4時に一度目が覚めて、そのときはもう一度寝られるのだが、5時にもう一度目が覚めたら、もう二度寝はできず、仕方ないので以前より早めに鴨川に出ることになる。
朝の鴨川って、みんな同じ時間に出てくるので、歩きはじめる時間が30分早くなると、知らない人だらけ。
もう何年も歩いているが、なんだか新参者になった気分。
さて、今週頭に販売開始したキリマンジャロは、おかげさまで好調にお求め頂き、今回入手した30キロが残り14キロになった。
次は、インドネシアのスラウェシ島で採れる「トラジャ」の逸品。
思いのほかキリマンジャロが早くなくなりそうなので、急いでテスト焙煎しなくては。
で、こうしてレギュラー商品以外のものを定期的にお出しするとなったら、当然仕入れの部分で悩むことになる。
現在ヴェルディでは、月間生豆を300~500キロ程度仕入れている商社や問屋さんが3社、月間60~200キロ以下くらいの少量仕入れ先が3社で、計6社とお取引があるのだが、数か月前から新たにちょっと普通とは違った色合いの豆を扱う商社さんと取引を開始した。
そちらとは、まだ2~3か月で400キロ程度しかお取引をしていないし、相手もヴェルディの焙煎量は知っているので、いきなり月間トン単位の取引に発展する可能性が低いことは承知されている。
B to Bに限定した商売をしている商社にとっては、毎月何トンも仕入れてくれる取引先が「お客様」であって、数百キロしか仕入れないヴェルディのような零細焙煎店は、労多くして益なしの、いわば枯れ木も山の賑わい程度の取引先というのが真意だと思う。
にもかかわらず、その商社の社長さんは、私の細かい質問にも嫌な顔せず丁寧にお答え下さり、もうヴェルディにも数回足を運んで、私の仕入れに対する要望などを聞いて下さるから本当に有り難い。
世界中を飛び回っている方なので、産地の情報にも非常に通じていて、農家の人とも一緒になって良い珈琲を作るための施策を考えていらっしゃるので、品種と土壌のマッチングなどにも明るく、一般論で語られている情報が、実は誤った見解であるということに気づかされることもしばしば。
そんな商社の社長さんが、先日もお越し下さり、私が今後仕入れたい豆についての話を聞いて下さり、その可能性をご検討頂けたのだが、その折にこんなことを聞いてみた。
「貴社は、もっと○○さんとか、△△さんとか(業界の人なら誰でも知っているロースターさん)ともお取引があって、うちみたいな小さなところを相手にしても利益は少ないだろうに、どうしてこんなに熱心に私の話を聞いて下さるのですか?」
すると、「理由は2つ。一つは、続木と話したら、実際のお客様の反応や、それがどういう部分に起因しているかを聴けるので、最終消費者の求める傾向を知ることができるから。もう一つは、上からでも下からでもない目線でお付き合いできるから楽しい。」
ということだった。
なるほど、と思った。
私は、産地の現状や品種の詳細、土壌のこと、流通過程など多くのことにおいて、その社長の持つ知識に遠く及ばないし、及べるはずもない。
そういう点で、私は彼から学べるものはとことん学んでやろうという姿勢で接しているし、その社長も私が貪欲に聞いてくると言うことは、きちんと様々なことを理解した上で珈琲の焙煎に取り組もうとしている人間だと思ってくださっている。
ある意味、お互いがリスペクトしあっている関係なので、上からでも下からでもない関係性でいられることが、精神的な居心地よさを感じる要因なのだろう。
お客様商売をしていると、店の従業員に対して上から目線で言ってくる人が多い。
日本では、少し前に「お客様は神様です」なんて馬鹿げたことを言う人がいたので、そんな感覚で店員と接する人が少なくないのは事実。
そして、稀にものすごく下から目線と言うか、必要以上にへりっくだって店員に接するお客様もいらっしゃる。
どんな方にも公平に、きちんとした接客をすることは大前提なのだが、やはりすごい上から目線で来られると、心にザラっとしたものが走ってしまう可能性が高くなる。
一方で、必要以上にへりくだって来られると、接客する側は気を遣ってしまう。
店側もお客様も、互いがリスペクトしあえる関係というのが、ある意味最も良いやりとりができる環境にあるため、店はお客様に最善の商品とサービスを提供でき、お客様も満足できるものをお求めになれる可能性が高くなる。
ヴェルディの店という場の前に、仕入れ豆を選定する場においても、それは同様のこと。
仕入先の方と、単なるなれ合いではなく、本当に良好な関係を築きつつ、本当に良いものを仕入れることで、お客様にもご満足いただける珈琲が提供できるわけで、商売における関係性というのは非常に重要だなと、改めて思ったひととき。
K社長、良い生豆としっかりした情報を頂いて、よりお客様にご満足いただける珈琲を販売することにより、貴社からもっとたくさん豆を仕入れられるよう頑張ります!