自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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2023年08月

ちょっとだけ

2023年8月31日 

早いもので、8月も今日が最終日。

今年の夏は、本当に暑くて、朝のニュースを見ていると「危険な暑さ」という表現が多く、ニュースキャスターが「不要不急の外出は控えた方が良い」といったことを言うものだから、住宅街にあるお店にとってはけっこう辛い季節であった。

そんな中、芸大店は夏休みも終盤で、芸大1年生恒例の「ねぶた」作りだとか、課題などをしに登校してくる学生も多く、お盆明けのころと比べると随分賑わってきた。

そんなこともあり、ソフトクリームの販売を開始したら、徐々にお求めくださるお客様も増え、今日は結構な数ソフトクリームの注文が入った。

まぁ、暑い時期はホットよりもアイスの方が出るものだが、やはり学生さんにとってはアイスコーヒーよりも、こっちの方が良いようで・・・

コーヒー屋としては複雑な心境だが、お客様が求めるものを販売するのが商売。

もうちょっと涼しくなるまで、なんとか凌いでいこう。

白い巨塔が真っ黒だった件

2023年8月29日 

今日は、朝から仕事関係の電話が何本かあり、電話で打ち合わせをしたり、何本か来ていたメールの返事などを終えたら、午後からはヴェルディの豆の多くを提供して下さっているコーヒー仕入れ人の橋本氏が、先日産地へ買い付けに行ってこられたときのレポートをZoomでされるということだったのでパソコンに向かう。

産地のことは、知っているつもりでも、ともかく刻一刻と変わっていくこともあり、なるべく最新の情報にアップデートしておかなくてはなので、こういう情報はとてもありがたく、また、「そうだったのか!?」ということも多々あり、私が休みの日とちょうど日程が合って良かった。

さて、京都芸術大学店の本棚には、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司先生が書かれた本が何冊かある。

そこに新たな一冊が加わったのだが、そのタイトルが「白い巨頭が真っ黒だった件」という、なんだか刺激的なタイトル。

これまで皮膚病についての本を何冊か執筆されていたのだが、今回はご自身の体験をもとにした「読み物」を執筆され、私は早速kindle版で購入して、先日の東京出張の折に新幹線の中で読んでしまったのだが、先日その大塚先生がサイン入りの著書を持ってご来店下さった。

内容を一言で表すなら、大学病院の医局で起こるどろどろなお話。

だが、軽快なテンポで書かれており、さらっと読み進められる。

後半の教授選における、組織の恐ろしさが、この本のメインテーマだと思われるが、個人的には前半で出てくる山村阪大総長の言葉「夢見て行い、考えて祈る」という部分が、医学の研究とコーヒーの焙煎、実は共通しているんだと思った。

最終的には大塚先生のサクセスストーリーなのだが、その過程において、いろいろな策略により貶められる恐ろしさが語られている。

これから読もうかと思う方もいらっしゃるかもしれないので、ネタバレ系のことは書かないが、著者の反対側にいる人の理屈(それが正しい・正しくないとは関係なく)も知りたいなぁ、と。

どうして、そんな境地になったのか、恐らく医者になった当初は純粋な目で医療というものをを見ていたと思うのに、どうしてそんな方向へ考え方が変わっていったのか、その過程や自分の中で現状をどう正当化しているのか、などを個人的には知りたいと思った。

大塚先生の次回作、期待しております。

豆 後編

2023年8月28日 

昨年タンザニアとケニアへ行ったときのこと。

ケニアのNCX(ナイロビコーヒーエクスチェンジ)で、次週行われるオークションの出品豆をみたときのこと。

恐らく、日本で自家焙煎をしている人たちは、ケニアのグレードだと【AA】か【AB】悪くても【B】くらいしか目にしたことがないように思う。

実際、私も【C】以下のケニア産コーヒーを見たことはなかった。

しかし、オークションのカタログには、AAから始まりTT、Tという豆がけっこう入っている。

この【TT】【T】は、比重選別したときに軽くてはじかれた豆や、欠けてしまった豆などで、言わば私たちが店でハンドピックをした場合、はじいた欠点豆の集合体とも言えるようなもの。

つい、輸出業者の方に「こんな豆買う人いるんですか?」と訊いたら「これがロースターさんにとっては一番儲かる豆なんですよ」と。

↑NCXのオークション出品豆のサンプルルームで。

私が訪問したときは、まだメインクロップ(主収穫期のもの)ではなく、フライクロップ(少し早く収穫されるもの)だったので、若干クオリティーは悪いものが多く見受けられたが、それにしても【T】グレードのサンプルを見て絶句。

これは、もうハンドピックなどできない、と言うより、私たちだったらハンドピックして欠点豆を取り除くのではなく、この欠点豆の中から使えるものを探すと言った感じかもしれない。

一方で、「これが一番儲かる」という言葉が、喉にひっかかった魚の小骨のように、なんとなく嫌な気分をひきずりながら、NCX視察を続けた。

私たちが仕入れるコーヒー豆だと、どうしても100gあたり販売価格700円を切ることはできないが、世の中にはその半額以下の豆が多く流通している。

つまり、こういった二束三文で買える【T】や【TT】といった豆を混ぜながら、うまく原価調整をして大量販売することで、利益を出すということなのだろう。

ブラジルで言えば、No.4-5(フォー ファイブ)NY市場の基準となるグレードで、No.2よりはかなり安価に流通している。

安価なブレンドベースとして使われているもので、これよりも2段グレードが下がると、輸出基準外=国内消費向けとなる。

(だから、ブラジルの一般的なコーヒー店で飲むコーヒーは決して美味しくない)

実際No.4-5のグレードだと、かなり欠点豆が混入しているし、リオと言われる悪い臭いを出す豆が若干混ざっているのだが、ケニアの【T】はそんなレベルではない。

しかし、それもビジネス。

需要がないところに供給はないわけだから、非難することではないのだが、個人的にはこの豆を見てしまうと、やはり安価なコーヒーは飲みたくないと思ってしまう。

が、裏を返せば、私はコーヒーについては産地へ行って実際にどうなのか確認できるので、安いコーヒーがどんな原料を使っているのか分かるのだが、私の専門外のものについては、どうなのか知る由もない。

でも、こうしてコーヒーの実情を見ると、「安いものには訳がある」ということがよくわかる。

毎日、そんなに高いものばかり食するわけにはいかないが、少なくとも「安さ」だけに走るのは、本当に恐ろしいと実感するひとときであった。

豆 前編

2023年8月27日 

今年は初めて敬老の日のギフトボックスを作り、現在ご予約受付中なのだが、そのギフトボックスに珈琲とセットで入れるお菓子を何にしようか考えた結果、定番のフィナンシェに加え、宝泉堂さんの「しぼり豆 黒大寿」を使わせて頂くことになった。

せっかくだったので、宝泉堂の古田社長に、しぼり豆に対する思いを聞かせて頂こうとお願いしたら、お忙しいにも関わらず二つ返事でご快諾下さって、しっかりとお話を聞かせて頂くことができた。

その折に宝泉堂さんでは丹波黒豆の中でも、一番良いもの、【秀】と【優】と【良】があったら、【秀】しか使わないとおっしゃっていた。

秀と優の違いは、品質的には同じでも、少し傷がついていたり、軽かったり程度で、炊いてしまったらよほどの人でない限り区別はつかない。

しかし、区別がつかなくても、決して秀品以外は使わないというのが、宝泉堂さんのプライドであり、お客様の信頼にこたえる術であるという、本当に自社の商品に対しての強い信念を感じずにはいられないお話であった。

同時に、産地も【秀品】と偽って【優品】を出しても、よほどでないと区別はつかない中、宝泉堂さんには何があっても【秀品】しか納めないというのは、長年産地とともにしっかりとした商品を作り上げてきた信頼関係から。

そんなお話を伺うと、実は珈琲も全く同じことが言えるということに気付く。

珈琲豆の場合、海外の、しかも決して先進国と同じレベルでやりとりができるとは限らない国のものを仕入れなくてはならない上、自分だけで何かができるというわけではないので、日本と同じ感覚では難しいのだが、やはり私もそのときに入手できる中で、最も良いものを仕入れるよう努力している。

また、産地へ行くのも、その国のシステムを知ることや、輸出する人がどんな人なのか、そして現地へ行くからこそ、信頼関係とまでは言えなくても、少なくとも他の顔も見たこともない人に対してよりは、良いものを入手できる可能性が高くなるという部分がある。

そして、いろいろな豆を見て、その国の精製方法や収穫方法などをじかに見てこそ、分かることも少なくない。

しかし、それ以前に、私も知らなかったことが分かるということもあり、それがけっこうショッキングなことだったということもあり。

明日は、昨年ケニアへ行って、私も知らなかった豆のことについて書きたいと思う。

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