この1年、コーヒー生豆の価格が高騰して、ブラジルとグァテマラが1.5倍、コロンビアやケニアが1.8倍、エチオピアに至っては2倍以上の値上がりとなった。
ヴェルディでは、なんとか仕入れ関係をしっかりとして、あまり価格を変えずに来たが、ちょっと限界にきてしまっているので、近々売価改定をしなくてはならないかもしれない。
そんな中、エチオピアの産地情報が入ってきた。
一昨年は長雨による収穫期の遅れがあり、クオリティーが全体的に落ちていたが、昨年は一転降雨量もしっかりとありつつ、雨季が収穫期に長引くこともなく豊作だったのは喜ばしいことだが、エチオピアのコーヒー価格に対する法律が変わったこともあり、チェリーの価格が史上最高値になってしまった。
その影響でエチオピアの生豆価格がこれまでの2倍程度まで高騰した。
ところが、市場経済の原理原則として、急速な高騰が起こると、買う側も躊躇するので売れずに余剰在庫が出てしまうという現象が起きる。
昨年は、チェリーを仕入れる仲買人が、価格の高騰で多額の仕入れ代金を銀行から借りたものの、売れないと借金の返済も滞る。
すると、返済が滞ったら銀行はお金を貸さなくなるので、仲買人は仕入れたくても仕入れられない。
買い手がつかなかったら当然売価は下がって、チェリーの価格も昨年より安値で取引されることになる。
それだけを見ると、豆の価格が下がって仕入れる身としては喜ばしい、と、思ってしまうのだが、そう簡単な問題ではないのが産地との取引というもの。
先述の通り貸した金を返してもらえない銀行が貸し渋りに入り、今年は豊作にもかかわらず仲買人が仕入れるためのお金を調達できなくなる。
そうなったら、農家はより安く売らなくては収入がなくなってしまう。
でも、たたき売りはしたくない・・・
そしたら、どうするかと言うと、ちゃんとした設備のある精選加工所(ウォッシングステーション)に持ち込んでも現行の安い価格でしか引き取ってもらえないので、自分たちでサンドライ精選(ナチュラル精選)をしてストックし、価格が上がるのを待つという方向へ行ってしまう。
仮に、各々の零細農家が、きちんと管理して、しっかり丁寧にサンドライ精選をすれば良いのだが、普段はウォッシングステーションで人を使ってきちんと撹拌しながら、未熟豆も取り除きながら精選するところを各農家が本当にちゃんと面倒を見るかどうかが問題になる。
それ以前に、優良なウォッシングステーションは持ち込むチェリーの熟度をきちんとチェックして、未熟なものが多く混入しているものは受け付けないということもある。
しかし、熟度のチェックなしのフリーパスになってしまったら、各農家が本当にちゃんとした収穫をするかどうかも不明になってしまう。

すなわち、23-24のナチュラルクロップは、安値にはなるかもしれないが、普通に商社から仕入れた豆は玉石混交のものであるリスクが高くなってしまうということになる。
そして、もっと恐ろしいのは、零細農家は水洗加工所など持っていないので、各農家でできるのはナチュラルのみ。
すると、ウォッシュドが市場にほとんど出回らず、チェリーの売価が下がっても、ウォッシュドの価格は高騰してしまう可能性が高いということ。
今までエチオピアの豆の仕入れは、ほとんどが公的オークション経由だったところ、2年前に大幅にシステムが変わり、ヴァーティカル インテグレーションが導入されたことで、輸入業者はオークションを介さなくても、ウォッシングステーションから直接買い付けができるようになった。
従って、優良ウォッシングステーションとの関係が構築されている輸入商社であれば、昨年同様とはいかなくても、農家が納得する価格を提示することで、品質の高いものを引っ張ってこられるかもしれない。
が、2年前はエチオピアの内乱で非常事態宣言が出ていたこともあり、ここ2年ほどの間に現地としっかり関係を繋げてきた日本の商社は私の知る限り1社しかないというトホホな状態。
で、11月~1月は、イルガチェフェやグジといった中南部の収穫最盛期になるため、私も23-24クロップのオーダーをそろそろ考えなくてはならないのだが、さぁどうなることやら・・・
またそのうちエチオピア、行かねばだなぁ・・・