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カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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フェアトレード-1

2023年11月20日 

先日、髙島屋S.C.店のスタッフから、こんな質問が届いた。

「お客様から、フェアトレードの豆はないのか?と訊かれましたが、フェアトレードの豆はありますか?」

恐らく、この質問をされたお客様は、素直に善意から、こんなことをお考えなのではないかと思う。

「一般的にコーヒー農家から輸出業者が買い取る価格が不当に安いため、農家の人たちが苦しめられている、人道的な観点から。農家の人にきちんとした代償を支払った豆を購入したい。」

普通に考えたら真っ当で、そうお考えになるお人柄は素晴らしいと思う。

ただ、実情はそんなに簡単なものではないのである。

先日、あるお客様から「おいしいコーヒーの真実」という映画のDVDを貸していただいた。

コーヒー生産国の事情を知らずに、この映画を見たら、その質問をされお客様のような気持になるかもしれない。

この映画で描かれていた世界は、ある意味正解で、ある意味全てを伝えているわけではないので、正解とは言えないもの。

例えば、三角柱を真上から見たら三角に見えるが、横から見ると四角に見える。

それを知った上で、真上からも横からも見せていれば良いのだが、真上からしか見ずに、「これは三角である」と断言してしまうと、誤った情報を与えてしまうこともある。

まず、前提条件として、コーヒー生産国の中でも、農園が価格の決定権を持っているところも少なくない。

有名なところでは、パナマのエスメラルダ農園なんて、農園を区画で割って、その区画ごとのオークションを行い、下手をすると1キロ10万円なんていう狂気じみた価格を要求するところだって存在する。

ある意味、大農園の豆を買いたたいて安価に仕入れるなんて話は、あまり聞いたことがない。

では、フェアではない価格で買い取られる可能性があるのは、どういったところかと言うと、小規模零細農家ということになる。

そして、小規模零細農家がメインの生産国というのは、主にアフリカやインドネシア、東ティモール、パプアニューギニアといったアジア・オセアニア地域にみられるもので、中南米のものは、ほとんどが単独農園から仕入れられるものなので、先の映画のようなことが起こるとは考えにくい。

さらに、アフリカと言っても、国によってシステムが違うので、ひとくくりにできないところがある。

つまり、コーヒー生産国の生産者は全ての人たちが虐げられていると考えるのは間違いで、中南米の農家などへ行くと、実はすごくリッチな生活をしていることだってあるし、アフリカにしてもケニアあたりの農園へ行ったら、家族一人が一台の車を持っているところだって少なくない。

一方で、エチオピアの零細農家などは、必ずしも多くの収入を得ているとは言えないが、現在のエチオピアは法律で収穫したチェリーの最低買取価格が決められている(一昨年に施行された法律)ので、不用意に安価で売買がしにくい。

そして、これがここ数年エチオピアの豆が高騰している原因の一つである。

それでもエチオピアの農家が貧困にあえいでいるのは、単に農園の面積が小さくて、収穫したもの全てを売っても、十分な収入を得られるほどの量が作れないということもある。

と言うわけで、ぱっと全体を見ても、フェアトレードという概念が必要な国・地域は限られてくる上、「コーヒー農家」と全体をひとくくりにはできないため、まずは、どの国の豆ならフェアトレードをする可能性があるかどうか、ということから考え、そこでフェアトレードが実現する土壌ができているかと言う点も見て行かなくてはならない。

そう書くと「フェアトレード実現の土壌とは?」という疑問が出てくるかもしれないが、このことを書き始めたら、またまた超長くなってしまうので、その点については、また次回個別の案件をもとに説明したいと思う。

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