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マスターの珈琲放談

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珈琲鑑定士

ブラジルの珈琲鑑定

2022年4月27日 

今回は、ブラジルにおける珈琲鑑定士の仕事について記載します。

店主は、ブラジルへ渡り、この鑑定士の資格をとりましたが、それはどのようなシステムで品質ごとの価格が決まっていくのかを知りたかったので、輸出国の基準を学ぶために鑑定士の講習を受け、資格を取得したというのがその理由です。

ブラジルにおける「珈琲鑑定士(クラシフィカドール)」は国家資格で、珈琲にグレードを付ける権限を持っています。単に「味・香り」だけで点数評価するのではなく、商取引において個々の豆の価格を詳細・適切に決める指標を作り、多岐にわたる要素で珈琲を評価します。

ブラジルにおける珈琲の格付けでは、以下(別表にしても可)の要素を各々鑑定します。

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ブラジルの珈琲鑑定要素

1. Defeitos Intrínseco 内的な欠点

2. Defeitos Extrínsecos(impurezas) 外的な欠点(不純物)

3. Bebida 味

4. Peneira(formato da fava); Chato / Moka / Triangulo

スクリーンサイズ(形状);フラット/ピーベリー/トライアングル

5. Preparo(Via Seca e Via Umida) 精選(ナチュラル/ウオッシュド)

6. Seca / Cor / Aspecto / Torra 乾燥状態 / 色 / 見た目 / 焙煎具合

…………………………….

上記中で、1と2は「Tipo」(タイプ)と呼ばれ、3は「Grupo」(グループ)と称されます。そこに、スクリーンサイズ(大きさ)や形状、精選、乾燥状態と色・見た目の質が加わり、豆としての価値が決まることになります。

この「Tipo」は、サンプル300グラム中に含まれる豆の欠点数を算出し(下ページの別表参照)、まずTipo 2~Tipo 8までの7種類に格付けされます。

Tipo.2は最も良く、欠点数が4以下、Tipo.8は最も悪く欠点数が360以下になります。

欠点数360以上は規格外の豆として扱われます。

2〜8の「Tipo」の間には、さらに6種類の中間値が設けられ、それはTipo「2/3」や「4/5」と呼ばれます。

ブラジルでは、欠点数は26欠点以下のTipo 4がベースとなっており、価格はこのTipo.4を基準に決定されます。

次に「Grupo」です。これはアラビカ(Grupo 1、Grupo 2)、コニロン[ロブスタ](Grupo 3)という3つに分類されます。アラビカのGrupo 1はBebidas Finas「良い味」、アラビカのGrupo2はBebidas Fenicadas「フェノール系の味」という分類です。それぞれの風味評価については、別表をご覧ください。

Grupo3のコニロン[ロブスタ]は、ロブスタの特徴が出ているかどうかで味の優劣が判断されます。

豆のサイズは、網で振るい、スクリーン(網目のサイズ)という単位で測ります。

最大はスクリーン19(7.6mm)以上で、最小はスクリーン9(3.6mm)まで(種子が1つしかない稀少なピーベリーという丸豆はスクリーン8~13)が計測の対象となり、スクリーンサイズが大きいほど価格も高くなります。

色の区分は、下ページの表を参照してください。

ブラジルでは、農園が収穫した豆を自分の敷地内でストックすると、定温倉庫の維持費がかかることや、強盗に入られる恐れなどリスクがあるので、収穫後精選を終えたら、輸出業者(場合によっては中間取次会社)の倉庫へ持ち込みます。

倉庫では、受け入れた豆をすぐに鑑定してストックし、生豆を仕入れに来たエクスポーターとの価格交渉が行われます。そのときにこれらのTipoとGrupo、色やスクリーンなどが取引の条件として提示されます。

例えば、非常にグレードの高い豆を欲しがっている人は

「Tipoは2、Grupoは 1。中でもEstritamente Mole、カラーはVerde Azuladoのスクリーン17で、見た目はBon(良い)、乾燥状態はBoa(良好)を〇〇袋」というように指定して、価格交渉に挑みます。

一方で、大量販売用に安価なブレンド珈琲やインスタントの原料として買い付けたい人は、「Tipoは4/5から5、Grupo1とGrupo2を適度に混ぜて、Rio(薬品臭)をあまり感じられない程度に。スクリーンは15あれば良くて、カラーはAmareladoくらいで良いので、1袋〇〇セント以内に抑えてほしい」という風に交渉します。

その場合、なかなか単一農園の豆では要求に応えられない場合があります。すると珈琲鑑定士が再び登場して、ストックしている豆のデータから数種類の豆をブレンドして、オーダーに合ったロットを作り上げます。

スペシャルティコーヒーを扱う私たちからすると、あまり品質の良くない珈琲などは、鑑定の必要もないように感じます。

しかし、欠点豆が多いTipo4以下の豆や、風味があまりよくないGrupo 2の豆も、こうしてブレンドされて安価豆を求められる取引に有効活用されるのです。

さて、そんな珈琲鑑定士の資格を持っていると、ブラジルではまず食いっぱぐれることはないのですが、日本ではあまり役に立ちません。

しかし、商社が「ブレンドに最適」などと言って、ブラジルから輸入された比較的安価な豆を出して来たら、鑑定士の私は現地でどんな取引が行われたのか、だいたい予想することができます。それが本当に役に立つのかどうかは別として、珈琲鑑定士というブラジルの国家資格は、世の中で珈琲がどのように取引して価格決定され、流通しているのかを深く理解できる、とても良い資格だと私は思うことにしています。

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