前回に引き続き、ブルボン種について書いて行きます。
今回も、まずはブルボン種の非常にアバウトな系譜を載せておきます。

【イエローブルボン】
● 由来
イエメンよりレユニオン島(旧ブルボン島)へ伝搬した「ブルボン種=レッドブルボン」とティピカの中でも熟すと黄色くなるもの(アマレロ デ ボッカツ)が自然交配してできたものと言われる。
● 風味
マイルドで飲みやすく、風味特性は良い。
レッドブルボンよりも甘みが強いとも言われるが、品種の問題なのか農園などの管理の問題なのかは不明。
● 木および豆の特徴
ティピカよりも2~3割多く収穫できるが、他の高生産性品種と比べると、収穫量は少な目。
実のサイズは比較的小さめ(レッドブルボンも同様)で、スクリーン16以下がメイン。
熟すまでのスピードは速め。
【ピンクブルボン】
● 由来
他品種との自然交配、または突然変異と言われているが、正確には不明。
熟すとピンクっぽいオレンジがかった赤い色になる。
● 風味
他のブルボン種とは風味の面で大きく違い、浅煎りだとゲイシャに似た特徴を持つが、ゲイシャと比べると実が硬いため、非常に酸味が強く出てしまう。
中煎りの後半まで焙煎を進めたほうが飲みやすいが、ゲイシャっぽさは失われて、独特のコクと甘みを楽しめる。
ゲイシャの場合、ここまで焙煎を進めると完全にキャラクターが損なわれるので、そういう面ではやはりブルボンと言える。
【モカ】
● 由来
レユニオン島由来のブルボン種の突然変異と言われているが、ブルボンとは形状や風味が違うことから、イエメンから渡った中の別品種ではないかという説もある。
現在は、マウイ島で栽培される「マウイモカ」と一部ブラジルでも生産されている。
● 木および豆の特徴
非常に小粒で丸っこい。
ヴェルディでも一度販売をしたが、小さなピーベリーという感じで、ブルボンというイメージは全くない。
樹高は低く、さび病には強いが生産性が非常に低いため、ほとんど栽培されていない。
● 風味
風味は良くて、マイルドでクリアで甘みもある。
標高が低いところでも、高いカップクオリティーを発揮できる豆。
【カツーラ】
● 由来
ブラジルのミナスジェライス州で発見されたブルボンの突然変異種。
1910年に確認されているが、正式にカツーラ(カツゥーラ)種として世に出たのは1935年頃。
● 木および豆の特徴
樹高は低く、非常にコンパクトな木。
元の品種よりも小型化した「矮小種」と言われる。
しかし、生産性は高く、ティピカの2~3倍の収穫量を誇る。
一方で、非常に土中の栄養を要するため栽培にはケアが必要とされ、年間降雨量も2,500~3,000mmは必要とされる。
生産性が高いため、人気の品種ではあるが、さび病に対する耐性が低く、いったん病気が流行り出すと壊滅的な影響を受ける品種でもある。
● 風味
ブルボン直系だけに、風味特性は優れおり、標高が高くなるほど風味も良くなる。
一方で、標高が高くなると、生産性が落ちてくるので、高生産性品種としての優位性が落ち、さび病のリスクと天秤にかけると、難しい選択を余儀なくされる。
● 一言
ブルボン直系の高生産性品種ということもあり、他品種との交配が非常に活発に行われている品種。
カツアイ(カトゥアイ)やカチモールといったハイブリッド品種の元になっている。
カツーラも、熟すと黄色くなる「イエローカツーラ」があり、ブラジルの中でもマッタデミナスとエスピリットサント州の州境あたりの高地でよく栽培されているが、現地では「イエローカツーラ」と言わず、そのあたりの地名から「イエローカパラオ」と呼ばれている。
実際、遺伝子的にはイエローカツーラとイエローカパラオは若干違うらしい(現地の人談)
【ヴィジャサルチ】
● 由来
正確な記録がないので不明だが、1920年~1950年の間あたりに、コスタリカで発見されたブルボンの突然変異種。
コスタリカのアラフェラ州(首都・サンホセにほど近い場所)の北西部にある「サルチ」という町で発見されたことからヴィジャサルチ(ビジャサルチ)と命名された。
● 風味
ブルボンのフルーティーさを持つ良好な風味。
● 一言
高地での栽培に適しているが標高1,200~1,500mmでも良好な風味を出せることから、コスタリカ国内では栽培が広がったものの、病害虫への耐性が低いことから今では下火となっている。
【パーカス】
● 由来
1950年頃、エルサルバドルのサンタ アナにあるアルベルト・パーカスという人の農園で発見されたブルボンの突然変異種。
● 木および豆の特徴
カツーラと同様に、木がコンパクトな所謂「矮小種」の特徴を持っている。
生産性は通常のブルボンより高いものの、カツーラほどではない。
しかし、低地での栽培に適しており、干ばつなどにも強く、栽培される土が多少肥養さを欠いても育つ特徴がある。
同じ矮小種でも、土中の養分が多く、2,500~3,000mmの降雨量を必要とするカツーラとは逆の特性を持っている品種。
● 風味
ブルボンの特徴をしっかりと受け継いでとても良好な風味。
● 一言
エルサルバドルのコーヒー研究所で、優良種(同じ品種の中でも特に優れたものを選別する)の選別が重ねられた結果、現在でもエルサルバドルの栽培品種の25%近くを占めるシェアを持つ。
ただ、小粒であることから、エルサルバドル以外の国では、ティピカの突然変異で大粒の品種「マラゴジッペ」と掛け合わせた「パカマラ種」が多く栽培されている。