2021年11-12月号掲載
世の中に流行り廃りがあるように、珈琲にも流行というものがあります。私が珈琲の修行を始めたころ、京都では極深煎りのものが主流と言っても良いほどでした。
しかし、20年の月日が流れ、まだまだ京都では深煎りを好む人は多いものの、極浅煎り珈琲も姿を現し、一定のファンをつかんでいます。
世界に目を向けると、一時はウォッシュト(水洗式)の珈琲が主流だった中、近年ではナチュラル(天日乾燥式)の風味を好む人が増え、これまで水洗式しか扱っていなかった中米各国でもナチュラルを取り入れる農園が散見されるようになっています。
そんな中、「アナエロビック」と呼ばれる、チェリーの状態で嫌気性発酵を実施して豆に風味をつけるという新たなプロセスが流行り始めています。
ヴェルディでも、ブラジルの「フルッタメルカドン」はアナエロビックに該当します。
フルッタメルカドンは、嫌気性発酵がブームになる前から研究を重ねてきて、安定した品質を誇りますが、ブラジルで嫌気性発酵が流行るきっかけとなったのは、思わぬ偶然の副産物だったのです。
2017年、ブラジルのカップオブエクセレンスで優勝したヌネス農園は、予想以上の収穫量で摘んだばかりのチェリーが乾燥工程に入れず、やむを得ず急場しのぎでスタッキングドライヤー(トラックの荷台のような乾燥機)の中で一時保管しました。数日後にパティオ(乾燥場)に広げたところ、スタッキングドライヤーの中でチェリーが発酵してしまっていたのです。
本来なら商品にならないはずでしたが、それをナチュラル精製してカッピングしたところ、何とも言えないフルーティーな風味の珈琲になっていたのです。
そのロットをコンテストに出品したところ、見事カップオブエクセレンスで1位を獲得。
そのことがきっかけとなり、当時は一部で研究が続けられているだけだった嫌気性発酵製法が、一躍ブームとなりブラジルのスペシャルティ珈琲農園がこぞって取り入れ、世界の珈琲市場に波及していったのです。
世の中、偶然が凄いことに発展することもあるということですね。
でも、偶然とはいえ本来なら廃棄するものを試してみたヌネス氏のチャレンジ精神がなければ、ここまでアナエロビックが早く普及しなかったかもしれません。
そんな嫌気性発酵で精製された珈琲、興味のある方はぜひヴェルディのフルッタメルカドンをお試しください。


