自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

マスターの珈琲放談

  1. 下鴨店TOP
  2. マスターの珈琲放談
  3. 月刊紙コラム

月刊紙コラム

いや、もう、パプアですから

2023年6月1日 

2023年6月号掲載

 前回の珈琲夜話の会が終わった後、ご参加くださった方に、次はどんなテーマが聞きたいかと訊いたところ、「そういえばパプアニューギニアについての会がなかった」というご意見を頂きました。
 そんなこともあり、今月はパプアニューギニアのお話をすることになったのですが、さて、パプアニューギニア(以後PNGに省略)は、口で何と言っても、やはり行ってみないと理解できない国だとつくづく思うのです。
 あまり大声では言えないのですが、あるコーヒー商社からPNGの豆を購入するにあたり、今まで購入していたその会社独自のブランド商品が、カタログからなくなっていたので、入荷があるかどうか問い合わせたところ、こんなこたえがかえってきました。
「これ、普通の人に言っても分からないので内緒にしているのですが、PNGへ行ったことのある続木さんなら分かると思うので・・・実は、あのブランド商品と同じクオリティーのものをスタンダード品として販売しているので、そちらを買ってもらえればお得で良いものが買えます。」と。
そのブランド商品と、スタンダード品では、2割以上値段が違います。
当然、どうしてそんなことをしているのか?と訊いたら「いや、もう、パプアですからぁ・・・」という返事。
 その口調を聞いて、だいたい理解できてしまうところがPNG体験者の不思議なところですが、「同一ロット品違いですね」ときいたらビンゴでした。
 PNGから出荷されるコーヒーは、全てCIC(コーヒー インダストリー カンパニー)という政府管理下の団体が仕切っています。
 日本に入ってきているPNGの豆は、単一農園産よりも複数の零細農園のものからロットを作ってブランド名をつけて販売しているものが多い状態です。
そうなると、CICに入ってくる豆から仕入れロットを作らなくてはならないのです。

普通、政府直轄の団体と言ったら、しかも輸出入を取り仕切る機関であれば、かなりしっかりしているものと思ってしまいそうなものなのですが・・・・

 恐らく、PNGへ行って、このCICという団体と行動を共にして、現地の人たちと接していたら「いや、もう、パプアですから」という言葉の意味が体感的に理解できるのですが、これはいくつかの例えを出しても、なかなか普通の人は理解できないように思うのです。
 そんなこともあり、今までPNGの夜話は避けてきましたが、今月はいよいよ。
どれだけ皆様に理解して頂けるか分かりませんが、不思議の国パプアニューギニア、少しでも知って頂ければと思います。

好きなコーヒーは?

2023年5月1日 

2023年5月号掲載

 珈琲豆をお求めにご来店下さったお客様から、よく「マスターが一番好きな豆をください」と言われることがあります。
ヴェルディとしては、私の好みのコーヒーというのではなく、お客様のお好みに合わせてお求めいただけるよう、多くの種類を揃えているのですが、やはり迷ったときは、店主の好きなコーヒーを飲んでみようと言うことになるのかもしれません。
 ただ、私たちとしては、おすすめしたものがお客様の好みの味かどうか分からないので、せっかくお求め頂いたのに、お口に合わなかったら・・・と思ってしまいます。
そのようなわけで、やはりお客様のお好みを伺って、それに合うものをお勧めしたいというのが本音のところです。

話は変わって、まだヴェルディでお求めくださったことのない方からの質問で、「最近は浅い焙煎のものが多く、深煎りを注文しても、けっこう酸味の強いものを出されることがある。これは、焙煎する人の好みが浅煎りだから、どの豆もそうしているものだと思うが、ヴェルディは本当に深煎りをしているのか」というものがありました。

そこで、私はこのようにおこたえしました。

 ヴェルディでは、各々の豆の個性を発揮できるよう、豆の特徴に合わせて浅煎りから深煎りまで煎り分けています。
その際、店主の好みは可能な限り排して、純粋にその豆のポテンシャルを引き出すことだけを考えます。
 これは、子育てと同じことかもしれません。
 親が、自分の思った通りの子供に育てようとするのか、その子の個性をしっかりと見極めて、その子供が最も輝けるように導くのか。

 ヴェルディは、コーヒー豆をわが子のように大切に思っております、故に、豆の焙煎を子育てに例えるなら、その子供(豆)の個性を活かせるように導きたいと考えております。

 どんなに良かれと思っても、どんなに愛情を持っていても、子供の個性を無視して、親が望むように育てようとすると、むしろ逆効果になることが多いのが子育て。
 コーヒーの焙煎も同じで、本来深煎りに向いている豆を浅く煎っても酸っぱいだけで風味が出て来なくなります。
反対に、浅煎りに向いている豆を深く煎ってしまうと、苦いだけで香りが出てきません。
 そうおこたえしつつ、ふと思いめぐらせたとき、お客様から「マスターが一番好きな豆は?」ときかれたときのこたえも容易に出てくるようになりました。
 「私には3人子供がいます。ここに並んでいるコーヒーは、全て私のわが子同様愛おしく大切に仕入れて焙煎したものです。
私は3人のうち、どの子が一番好きか?ときかれても、決して答えられません。全員等しく愛情をかけているからです。
コーヒーも同様なのです。」
 だからこそ、私は全ての豆の個性を知っているので、お客様のお好みを伺えば、きっとベストなものをお勧めできると思っております。
どの豆にするか迷ったら、ぜひ私たちにお好みをお伝えくださいませ。

バナナはスーパーフード

2023年4月1日 

2023年4月号掲載

 みなさんは「バナナ」と聞いたら、どんなイメージを持つでしょうか?
ヴェルディのスタッフに聞いたところ「朝食」とか「おやつ」「小腹がすいたときに食べる」といった返事がかえってきました。私も朝食にヨーグルトにカットしたバナナと冷凍ブルーベリーを入れて食べたりすることが多く、我が家の常備色になっています。
 バナナは栄養価が高く、そこそこ保存もできるので、スーパーフードと呼ばれていますが、コーヒーの産地においては、単に栄養補給と言うだけではなく、本当にいろいろな意味でのスーパーフードなのです。
 タンザニアの産地を訪問していた時のことです。道を走っていたら、見渡す限りバナナの木がが目に入りました。
そこで、現地の人に「このあたりはコーヒーではなく、バナナの栽培がさかんなのか?」と聞いたら「いや、ここらへんみんなコーヒー農園だ」という返事がかえってきました。
 コーヒー栽培において、直射日光をあてすぎないということは需要で、多くの農園は「シェードツリー」と言われる高木の下にコーヒーの木を植えることで、日陰を作って直射日光を避けています。そう言われてよく見ると、バナナの木の下にはコーヒーが植わっています。
そこで現地の人曰く、バナナの木は葉も大きいので最良のシェードツリーになり、さらにコーヒーの収穫ができない季節には、バナナを収穫して売ることで収入が得られ、また自家用で食べる分にも栄養価が高いのでとても良い。
ということでした。
 零細農家が集まる組合へ行くと、珈琲農家の人たちが収穫時期以外にも収入を得られるよう、様々な仕事を斡旋しています。
 ある組合では、コンクリートブロックを作って販売していたり、別の組合では豆の集荷場横に衣類や工芸品の売店があり、店の前では農家の女性がミシンで服を作っていました。
 そんな中、バナナはシェードツリーの役割も果たし、売ることで収入にもなり、自家用で食べても生きる糧になる、文字通り多岐にわたってのスーパーフードなのです。
アフリカに限らず、コーヒーの産地へ行くと、必ず朝食の場にバナナが並んでいます。
私が今まで食べたバナナの中で、最も美味しかったのは、パプアニューギニアの農園で振る舞われたものでしたが、コーヒー農園を訪問したときに食べるバナナ、そういった事情も考えると、また一味違った美味しさになりました。

バナナの木とコーヒーの木

組合の外ではコーヒー農家の人が作ったバナナが売られている

カフェインレスとスパイスカレー

2023年3月1日 

2023年3月号掲載

 最近、カフェインレスコーヒーのご要望が多くなっていると実感しています。
そんなお客様からのご要望におこたえするかたちで、このたびカフェインレスコーヒーのドリップバッグを作りました。
ご存じの通り、コーヒーにはカフェインが含まれており、この成分には眠気をとる効果があることから、夜遅くまで仕事や勉強をするとき、ロングドライブをするときなど、「コーヒーを飲んで頑張ろう」という方も多いかと思います。
 また、疲労回復や集中力を高める効果もあることから、古くは薬として処方されていた歴史もあるほどです。
 一方で、利尿効果を高めたり、摂取しすぎると心拍数の上昇や不眠、消化器官への影響なども指摘されています。
また、妊婦さんが過剰に摂取すると、低体重で子供が生まれてくるリスクがあったり、母乳にカフェインが含まれることから授乳中の子供が、なかなか寝付かないなどといったこともあるようです。
私の家内は、子供が生まれてくる前日までヴェルディのカウンターに立ち、コーヒーを淹れつつ、味見もしていたので、普通にカフェインを摂取していたと思われますが、特に問題なく元気な子供が生まれてきたので、個人差はあれど、全く摂取してはいけないとも言えないのではないかと思われます。
 とは言え、やはり普通に考えたらリスクは避けたいもの、妊娠中の人や、少し胃腸の調子が悪い人、コーヒーを飲んだら眠れなくなる人はカフェインを避けたいものでしょう。でも、コーヒーの風味は好きだからカフェインの入っていないものが飲みたい!と思われる方が多く、カフェインレスコーヒーに対する需要が高まっているものだと思います。
 さて、そんなカフェインレスコーヒーですが、普通コーヒーにはカフェインが入っているのが当たり前なので、「カフェイン入りコーヒー」と言うことはありません。カフェインが入っていないコーヒーが普通ではないから「カフェインレスコーヒー」という呼び方をするわけです。
ノンアルコールビールも然り。
 しかし、最近なぜか「スパイスカレー」という名称が出回っています。
私は、この「スパイスカレー」という表現にすごく抵抗があるのです。
なぜなら、カレーにスパイスが入っていないことはあり得ないわけで、「カフェインレスコーヒー」や「ノンアルコールビール」はあっても、「スパイスレスカレー」なんてものは世の中に存在し得ないものなのです。そうしてみると、なぜ「スパイスカレー」と言えてしまうのか、私としては不思議で仕方ないのです。
 日本語が堪能なインド人に「スパイスカレーってどう思う?」と訊いたら「そもそもカレー=スパイスと言っても良いくらいだから、スパイスカレーって表現は、頭痛が痛いと言っているのと同じだ」と言われたので、カレーの本場インド人も違和感があるものと思われます。
 余談はさておき、スパイスの入っていないカレーなんて、味気なくて食べられたものではありませんが、ヴェルディのカフェインレスコーヒーは「美味しさ」にこだわって仕入れと焙煎をしました。
「美味しいカフェインレス」ぜひお試しください。

左:カフェインレスの生豆

右:通常の生豆

カッピング

2023年2月1日 

2023年2月号掲載

 私は可能な限り、産地へ行って現地の状況を自分の目で確かめたいと思っていますが、それが即買い付けに繋がるかと言うと、そんな簡単なものではありません。
産地では、だいたい少なくても20~30、多ければ50~100近いサンプルのカッピングをしますが、その中で自分が使いたいと思った豆を仕入れられるかと言うと、なかなか難しいものです。
ロットの問題や、価格の問題、現地で買い付けをする商社の担当者が、私が欲しいと思ったのと同じ豆を「日本へ輸入したい」と思うかどうかと言うのも大きな問題です。
では、なぜ産地でカッピングをするのかと言うと、一つには現地で買い付けている人の評価と私の評価のすり合わせということがあります。
私が高く評価したものを現地の仕入れ担当者はどのように評価するのか。
また、現地の仕入れ担当者はどんな味を高く評価しているのか。それを知ることで、私が仕入れる商社が、どのような基準で豆を仕入れているのかが分かります。
生豆のリストには、その豆の風味特性などが書かれていますが、必ずしも私が感じる風味評価と、商社の豆リストに書かれている評価が同じとは限らない中、現地でカッピングする人が、どのような味をどのように評価しているかを知ることは、リストの評価を深読みできるという点で大いに役に立ちます。

そんな現地カッピングですが、マイクロロット(年間10~20袋程度しか作られない希少な豆)については、現地で買い付けてしまうこともできます。
これまでも、現地でカッピングした豆をロットごと買い付けたことはあるのですが、そこで一番難しいのが「産地でのカッピングと日本に入ってきてからのカッピングは必ずしも同じ評価にはならない」ということがあります。

産地で出されるサンプルは、収穫して精製されて間もない豆だということ、そして、その豆がこの後袋詰めされて一定期間倉庫で保管されて、船に積まれ日本に来るまでに3~4か月はかかること、その間にどのように味が変化するのかを想像して評価することが重要になります。
産地段階でベストな味だと、日本に着いたら風味が抜けているということも少なくありません。逆に産地では少し青臭かったものが、日本に来たら素晴らしい芳香になっているということもあるのです。

私も初めて産地訪問をしたときは、産地でベストなものが良いと思っていました。しかし、何か国かを回って、現地でカッピングしたものが、数か月後に日本に入ってきて再度カッピングしたら、風味が思いのほか変わっていて驚くという経験をしました。
そして、産地段階でこのレベルでないと日本に入ってきたらどうなるか、ということも分かり始めた今日この頃。
コーヒー豆の仕入れは、本当に難しいものだと実感しています。

産地の事情

2023年1月1日 

2023年1月号掲載

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は、多くのお客様にヴェルディのコーヒーをお召し上がり頂きました。
また年末には例年にも増してたくさんのギフト注文を頂戴しましたこと、心からお礼申し上げます。
今年はヴェルディ創業20周年を迎える節目の年となります。ヴェルディのコーヒーをご愛顧下さっている皆様には、より美味しいコーヒーをお楽しみ頂けるよう、スタッフ一同努力してまいります。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、そんな美味しいコーヒーをお届けするには、良い生豆を仕入れることが非常に重要な課題となります。
そのためにも、私は可能な限り産地へ出向いて、良い豆を仕入れるべく農園を回り現地の輸出業者と関係を作り、よりよいポテンシャルを持った豆を入手できるよう務めています。
そうして産地へ行くと、日本との違いに驚くこともしばしば。
いや、しばしばと言うより、産地へ行き始めたころは、日に何度も「まじか~!」と叫びたくなりました。
しかし、何度も産地を訪問するたび、現地の空港に着いた瞬間から価値観が産地モードに切り替わり、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなってきています。
とは言え、驚きはしないけど、ちょっと嫌だな・・・と思うのがトイレ事情。
新年早々こんな話題で申し訳ないのですが、産地のトイレ事情について、ちょっとお話したいと思います。
ここから先、食事中の方はお気をつけください。
農園へ訪問したとき、つい「トイレはどこですか?」と聞いてしまうことがあります。
しかし、一歩踏み込んだ瞬間後悔することが少なくありません。
エチオピアの農園でトイレを借りたときのことです。珍しく個室になっていたのですが、当然電気は通っていないので薄暗い室内、黒い壁のトイレかと思って一歩踏み込んだとたん、壁一面にとまっていたチョウバエが一斉に飛び出して、個室の中はチョウバエだらけ、ドアを開けて手で払って外に追い出し、無事用をたすことができました。
以来、農園ではトイレを借りず、摘み取りをしている作業者同様草むらを利用するようにしていたのですが、先日ケニアへ行った折は、つい農園で「トイレはどこですか?」と聞いてしまいました。
と言うのも、エチオピアは電気も通っていないところがほとんどなのに、ケニアは小規模農園でもしっかり電気が通っており、設備も良かったので油断してしまったのかもしれません。こちらも個室になっており、しかも電灯がついていて、壁にチョウバエもいなかったのですが、見ると床に直径20センチほどの穴があいているだけ・・・私史上最も困難な的中てをすることになってしまいました。
そのほかにも、産地だと便座がないことは珍しくありません。
パプアニューギニアでは、空港ですら便座がなく、つい「それなら和式トイレにしておいたら良いのに」と思いました。
また、アフリカの男性用便器は、なぜか非常に高い位置に設置されており、そうとう足が長くないと届かないということが珍しくありません。子供はどうしているのだろう?と思ってしまいます。
アフリカでも首都など都会ではトイレ事情も快適ですが、農村部はなかなか侮れません。
次に訪問する産地はどんななのか、現地トイレ事情に対する興味半分、怖さ半分。
驚きではなく、楽しみになっています。

このページの先頭へ