自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

マスターの珈琲放談

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verdiの投稿

産地の事情

2023年1月1日 

2023年1月号掲載

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は、多くのお客様にヴェルディのコーヒーをお召し上がり頂きました。
また年末には例年にも増してたくさんのギフト注文を頂戴しましたこと、心からお礼申し上げます。
今年はヴェルディ創業20周年を迎える節目の年となります。ヴェルディのコーヒーをご愛顧下さっている皆様には、より美味しいコーヒーをお楽しみ頂けるよう、スタッフ一同努力してまいります。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、そんな美味しいコーヒーをお届けするには、良い生豆を仕入れることが非常に重要な課題となります。
そのためにも、私は可能な限り産地へ出向いて、良い豆を仕入れるべく農園を回り現地の輸出業者と関係を作り、よりよいポテンシャルを持った豆を入手できるよう務めています。
そうして産地へ行くと、日本との違いに驚くこともしばしば。
いや、しばしばと言うより、産地へ行き始めたころは、日に何度も「まじか~!」と叫びたくなりました。
しかし、何度も産地を訪問するたび、現地の空港に着いた瞬間から価値観が産地モードに切り替わり、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなってきています。
とは言え、驚きはしないけど、ちょっと嫌だな・・・と思うのがトイレ事情。
新年早々こんな話題で申し訳ないのですが、産地のトイレ事情について、ちょっとお話したいと思います。
ここから先、食事中の方はお気をつけください。
農園へ訪問したとき、つい「トイレはどこですか?」と聞いてしまうことがあります。
しかし、一歩踏み込んだ瞬間後悔することが少なくありません。
エチオピアの農園でトイレを借りたときのことです。珍しく個室になっていたのですが、当然電気は通っていないので薄暗い室内、黒い壁のトイレかと思って一歩踏み込んだとたん、壁一面にとまっていたチョウバエが一斉に飛び出して、個室の中はチョウバエだらけ、ドアを開けて手で払って外に追い出し、無事用をたすことができました。
以来、農園ではトイレを借りず、摘み取りをしている作業者同様草むらを利用するようにしていたのですが、先日ケニアへ行った折は、つい農園で「トイレはどこですか?」と聞いてしまいました。
と言うのも、エチオピアは電気も通っていないところがほとんどなのに、ケニアは小規模農園でもしっかり電気が通っており、設備も良かったので油断してしまったのかもしれません。こちらも個室になっており、しかも電灯がついていて、壁にチョウバエもいなかったのですが、見ると床に直径20センチほどの穴があいているだけ・・・私史上最も困難な的中てをすることになってしまいました。
そのほかにも、産地だと便座がないことは珍しくありません。
パプアニューギニアでは、空港ですら便座がなく、つい「それなら和式トイレにしておいたら良いのに」と思いました。
また、アフリカの男性用便器は、なぜか非常に高い位置に設置されており、そうとう足が長くないと届かないということが珍しくありません。子供はどうしているのだろう?と思ってしまいます。
アフリカでも首都など都会ではトイレ事情も快適ですが、農村部はなかなか侮れません。
次に訪問する産地はどんななのか、現地トイレ事情に対する興味半分、怖さ半分。
驚きではなく、楽しみになっています。

Genuine Kilimanjaro

2022年12月1日 

2022年12月号掲載

11月前半、3年ぶりの産地視察にタンザニアとケニアへ行ってまいりました。
よく産地視察に行くと言ったら、「豆の買い付けに行く」ものだと思われる方がいらっしゃいます。
しかし、コーヒー豆の仕入れはそんな簡単なものではなく、大手ならいざ知らず、私たちのようなマイクロロースターが産地でカッピング(テイスティング)をして、それを仕入れられるなんてことは、ほぼありません。
帯同している商社と取引のある農園で、なおかつその商社がその農園の豆を今期一般販売する予定がある場合に限って、産地買い付けと言えるかもしれませんが、一般に販売されるのに先立って味見ができた、というレベルに過ぎないわけです。
では、なぜ産地へ行くのか?
訪問する国の農園が、どのような環境で、どのように栽培しているのかを見ることや、現地の関係者と直接話すことによって、日本では知りえない情報を仕入れること。
そして最も重要なのは、産地で視察のルートなどをコーディネートしてくださる輸入元が、どのような基準で買い付けの可否を判断するのか、また、農園や組合にどこまでリクエストを伝え、指導をしているのか、といったことを確認することです。
今回のタンザニはとケニアでは、輸出にあたってのオークションシステムや、組合等との直接取引における課題などを理解することができました。
そんな中、今回私たちをアテンドして下さった輸入商社の社長は、あえて困難な農園への指導をしっかりとやって、本当に良いロットを作り上げることに信じられないほどの情熱を持っていることを目の当たりにしたのです。
「何を仕入れるか」という観点でいえば、多くの商社や販売会社からサンプルをもらって、その年最善のものを購入すればよいのですが、こうして産地視察を重ねるごとに「何を仕入れるか」ではなく「誰から仕入れるか」ということが本当に重要だと痛感しています。
来年には、私が最も信頼する輸入元から、その名もGenuine Kilimanjaroを仕入れさせて頂きます。
タンザニアのコーヒーは、一部地域を除き、どこで採れても「キリマンジャロ」と呼ばれますが、こちらは本当にキリマンジャロ山麓で作られた正真正銘のキリマンジャロの中から、タンザニアらしいマイルドでコクと甘みをもったものだけを集めたロットです。
中米のような華やかさやフルーティーな香りとは一線を画す、コーヒーらしいコーヒー、王道のマイルドコーヒーが間もなく入荷。
今回のアフリカ視察で唯一「現地で仕入れ」に至った豆です。
仕入れる商社の情熱と、農家の努力により作られたホンモノのキリマンジャロ、ぜひお楽しみください。

アナエロビック(嫌気性発酵)

2022年11月1日 

2022年11月号掲載

 ヴェルディ京都芸術大学店と通信販売で取り扱っている「フルッタメルカドン」という豆があります。
これは、収穫後にチェリーが付いた状態で、酵母により実を発行させてから果肉を脱殻するという方法で精選された珈琲です。
とてもフルーティーで、ほんのりワインのような風味も楽しめます。
私は、ブラジルへ産地視察に行った折、この珈琲と出会って取り扱いを始めましたが、今ではこういった発酵というプロセスを挟む精選方法を「アナエロビック(嫌気性発酵)」と言って、多くの国、多くの農園が取り組んでいます。
ヴェルディにも、こういったアナエロビック豆のオファーが多数来るのですが、発酵臭が強烈すぎたり、風味が弱かったりで、なかなかフルッタメルカドンに匹敵するものは見当たらないのが現実です。
そんな中、最近ではコロンビアを中心に、発酵層にフルーツなどを入れて、チェリーを発酵させるだけではなく、フルーツの香りを付けて仕上げるというものも出てきました。
単に発酵させるだけのものが「アナエロビkック」と呼ばれるのに対して、フルーツなどを加えたものは「インフージョン」と呼ばれています。こうした豆が本来持つ風味にひと手間かけて香りを加えるということについての賛否はともかく、コーヒー業界も次々と新しいものを出さなくてはならない消耗戦になりつつあるのかという思いを抱くこともしばしば。
先日も、ある商社からのメールに「コーヒーの焙煎を突き詰めている自家焙煎店の方には失礼かもしれませんが、コロンビアからスーパーインフージョン・パッションフルーツ」が入荷しました。たまには変化球を!とお思いの方は、ぜひお試しください」という内容。
先に「失礼」と書かれているのには笑ってしまいましたが、私が自家焙煎店を始めた頃には考えられなかったことが起こっていることを実感しています。
ヴェルディでも、アナエロビックに加え、スポットで販売する酒樽で寝かせたものも人気の商品。
決して流行だけを追いかけることはしませんが、時流に乗るのもコーヒーを楽しむ方法の一つかもしれないですね。

お店の名前

2022年10月1日 

2022年10月号掲載

最近、街を歩くと知らない間に新しいコーヒー店ができているような感じがします。

先日ネットニュースでも、コロナの影響で脱サラをしてコーヒー店を作る人が急増中という記事を見ました。

コーヒー店が増えているという是非はともかく、お店を作るとき、店名をどうするかは多分開業希望者の多くが悩むところでしょう。自分の名前を冠する人もいますし、自分の趣味に関わる名前をつける人も多いと思います。

ヴェルディは、私がオペラ好きだったことから、イタリアの大オペラ作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの名前を拝借しました。

そんな中、ここ数年の間にできたお店の名前で「やられた!」というものがありました。

俗にいうサードウェーブの代名詞「ブルーボトルコーヒー」です。

青い瓶の絵が可愛いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ブルーボトル」というコーヒー店、実は今から300年以上前、ウィーンに初めてできたカフェの名前だったのです。

1683年、ヨーロッパ侵略を狙うトルコ軍は、ウィーン陥落を目指して侵攻しました。世に言う「第二次ウィーン包囲」

その年の7月、トルコ陣営の中をトルコ人と偽り、敵陣営の向こう側に位置するポーランド軍へ救援を求めに行く使者として、フランツ・ゲオルグ・コルシツキーという人物が選ばれました。

彼はアラブ世界で長く生活をしていた経験から、イスラムの風習に通じており、無事トルコ軍の陣営を突破しポーランドへたどり着きました。

9月12日、連合軍の総攻撃によりトルコ軍は、牛やラクダ、羊、穀物や金などとともに、豆のようなものが入った布袋を500個も残して敗走しました。

ウィーン市民は、この豆のようなものをラクダの餌か何かと思って焼き払い始めたのですが、その香りをかいだコルシツキーは、トルコ陣営を通過している間にかいだ香り、それを煮出して飲んだことを思い出し、その豆のようなものを下げ渡してもらうことに成功しました。

間もなくコルシツキーは、トルコ軍が飲用していたのを模して、コーヒーを作り、そのコーヒーを提供する「カフェ」をウィーンにオープン。

その名前が「ブルーボトル」だったのです。

1700年に入り、ウィーンは「カフェの都」と言っても良いほどカフェ文化が開花しました。

ドイツ然の騒々しいビアホールと違い、カフェでは生き生きとした会話が交わされ、ヨーロッパにおける新たな文化的な場となったのです。

しかし、まさかそのとき、その世紀の後半に起こるフランスの革命にカフェという文化が大きな寄与をすることになるとは、誰も思っていなかったことでしょう。

写真:ブルーボトルコーヒー創業者ジェームズ氏と

コーヒーセミナー

2022年9月1日 

2022年9月号掲載

ヴェルディ京都芸術大学店では、コーヒーの抽出から焙煎に至るまでいくつかのコーヒーセミナーを開催しています。

おかげさまで、最近は週末を中心にご予約頂けないことも多く、また滋賀県や大阪、兵庫など近隣他府県からお越しくださる方も少なくありません。

そんなセミナーですが、回を重ねるごとに難しさを実感します。

多くの方に対してセミナーを行っていると「自分が知っている・理解している」ということと、「人に教えられる」というのは全く違うことだということを思い知らされるわけです。

従業員に対する教育であれば、「分からなければ自分で勉強しなさい」と言うこともできますが、お客様に対しては、セミナーの時間内に可能な限りしっかりと理解して頂かなくてはなりません。

しかも、参加される方が、どの程度の知識をお持ちなのか分からない中、どのレベルで話せば理解して頂けるかを冒頭の数分で感じ取って、その方に合わせた表現や例を出しながら話さなくてはなりません。

そして一番難しいのは、知識が乏しい方に説明するときではなく、どこかで誤った知識を植え付けられて、それが真実だと信じている方に対して説明するときです。

少し前に、別のコーヒーロースターが主催するセミナーを受講した方が、「コーヒーを抽出するときに出てくる泡は、コーヒーのアクだからお湯を注いでふっくらと膨らんで泡が出てくるのは良くないコーヒーだ」と言われたけど、ヴェルディのコーヒーは、お湯を注ぐと膨らんで泡が出てくる、これは大丈夫なのか?と聞かれたことがあります。

正直、今までそんな質問を受けるなど考えたこともなかったので、逆に「しっかりと膨らんで、細かい泡が出てくるものの方が新鮮かつ適正な焙煎をされたものである可能性が高い。」ということを理解して頂くための説明方法を即座に思いつけず苦労したことがあります。

こうしてみると、私たちが日々「当然」と思っていることも、一つ一つ理由となぜそうなるかを考えて、いつでも誰にでも説明できるようにしておかねば、と感じます。

セミナーという、ある意味お客様が私を独占している状態だからこそ聞いてこられることも多いと思いますが、普段の接客でも同様のことは起こりえます。

私だけでなく、社員全員が「当然」の理由をしっかり言葉で表せるようになれば、もっとヴェルディは良い店になるな、と思う今日この頃です。

コーヒーより歴史あるコーヒーの飲用法?

2022年8月1日 

2022年8月号掲載

私が珈琲屋を始めると言ったとき、結核の権威でイエメンでも医療の現場に従事されていたドクターがこんなことをおっしゃいました。

「イエメンは非常に貧しい国なので、一般人はコーヒーを飲めない。コーヒーチェリーからコーヒー豆(種)を取り出した後の皮を乾燥させた『キシル』というものを湯に浸して飲んでいる。」

この話を聞いたとき、少なからずショックをうけましたが、その後輸出業者の方などと話をしていると、実はイエメンではコーヒーよりもキシルの方が人気で、むしろ綺麗な(原形を留めた)キシルを作るために、コーヒーそのものの精選がないがしろにされがちだということを教えてもらいました。

どうりで、イエメンの豆はハンドピックにてこずるものが多かった!

今から千数百年前、コーヒーが発見されて伝播していった頃は、種を煎って粉砕して湯に浸して飲む、今の飲用方法ではなく、果肉をそのまま食べたり、獣肉と混ぜて食べられたりしていたようです。

アラビカコーヒー発祥の地、エチオピアは今でも生肉を食べる習慣があるため、肉の臭みをとるのにも一役買っていたかもしれません。

そうしてみると、種より果肉を乾燥させて湯に浸して飲む方が、本来の用法としてはスムーズだったのかも、と思います。

そんなキシル、今では同様のものを「カスカラ」と呼び、ポリフェノールの含有量が赤ワインの10倍というスーパーフードとして世界的に人気が高まっています。

ヴェルディも芸大店で、じわじわと人気が出てきており、今月号ではアイスカスカラ茶の作り方もご紹介しています。

このアイスカスカラ茶、私も愛飲しており、少し疲れた時などに飲むと、頭がスキっとして、ちょっと元気が出る気がします。

そもそもコーヒー発見の伝説である「山羊飼いカルディ」の物語は、ヤギがコーヒーの実を食べてハイになっていたのを見たカルディ少年が、これを持ち帰り食べたところ、気分が高揚したというお話。

日本では、まだ新しいカスカラ茶、しかし、イエメンでは1,000年以上の伝統ある飲用法。

厳しい山岳地帯の人々が健康でいるための知恵かもしれません。

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