自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

マスターの珈琲放談

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東ティモール

2022年1月1日 

2022年1月号掲載

皆さんは東ティモールという国をご存じでしょうか?

オーストラリアの北に位置するティモール島の東半分が「東ティモール」(西半分はインドネシア)です。

1999年、インドネシアからの独立運動が始まりましたが、賛成派・反対派の間で紛争が激化、10月には国連によって国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)が設立され、国連が東ティモールを統治することになりました。

2002年、初の選挙が行われ、独立運動のシンボル的存在であったシャナナ グスマン氏が初代大統領に就任、依然内紛が激化する中、グスマン氏は2007年、首相に就任し国際社会との連携で内紛を抑え2015年の首相辞任まで東ティモールの安定に貢献しました。

そんなまだ独立して20年ほどの国ではありますが、コーヒー業界においてティモール島が果たした役割は大きいものがあります。

1700年初頭、オランダがインドネシア諸島でコーヒーの栽培を広めたのと、時を同じくしてティモール島にもコーヒーが伝搬されました。

1920年、ティモール島の農園で、それまで自然交配しないと考えられていた高級品種のアラビカ種と耐病性・生産性の高いロブスタ種の自然交配種が発見され「ハイブリッドティモール」と命名されました。

現在、世界で流通するハイブリッド品種や高生産性品種の多くは、このハイブリッドティモールが母体となっています。

味わいは、「古き良きコーヒー」といった感じで、酸味は少なく苦すぎずコクがあり、後味にほんのりロブスタの名残が感じられるものの、本当にコーヒーらしいコーヒーです。

今回は、シャナナ グスマン初代大統領の来日に伴い、開催された国際フォーラムで提供したコーヒーをご用意。

ハイブリッド品種の母体となった東ティモールの美味しさを最大限発揮した焙煎でお楽しみいただきます。

流行は偶然から

2021年11月1日 

2021年11-12月号掲載

世の中に流行り廃りがあるように、珈琲にも流行というものがあります。私が珈琲の修行を始めたころ、京都では極深煎りのものが主流と言っても良いほどでした。

しかし、20年の月日が流れ、まだまだ京都では深煎りを好む人は多いものの、極浅煎り珈琲も姿を現し、一定のファンをつかんでいます。

世界に目を向けると、一時はウォッシュト(水洗式)の珈琲が主流だった中、近年ではナチュラル(天日乾燥式)の風味を好む人が増え、これまで水洗式しか扱っていなかった中米各国でもナチュラルを取り入れる農園が散見されるようになっています。

そんな中、「アナエロビック」と呼ばれる、チェリーの状態で嫌気性発酵を実施して豆に風味をつけるという新たなプロセスが流行り始めています。

ヴェルディでも、ブラジルの「フルッタメルカドン」はアナエロビックに該当します。

フルッタメルカドンは、嫌気性発酵がブームになる前から研究を重ねてきて、安定した品質を誇りますが、ブラジルで嫌気性発酵が流行るきっかけとなったのは、思わぬ偶然の副産物だったのです。

2017年、ブラジルのカップオブエクセレンスで優勝したヌネス農園は、予想以上の収穫量で摘んだばかりのチェリーが乾燥工程に入れず、やむを得ず急場しのぎでスタッキングドライヤー(トラックの荷台のような乾燥機)の中で一時保管しました。数日後にパティオ(乾燥場)に広げたところ、スタッキングドライヤーの中でチェリーが発酵してしまっていたのです。

本来なら商品にならないはずでしたが、それをナチュラル精製してカッピングしたところ、何とも言えないフルーティーな風味の珈琲になっていたのです。

そのロットをコンテストに出品したところ、見事カップオブエクセレンスで1位を獲得。

そのことがきっかけとなり、当時は一部で研究が続けられているだけだった嫌気性発酵製法が、一躍ブームとなりブラジルのスペシャルティ珈琲農園がこぞって取り入れ、世界の珈琲市場に波及していったのです。

世の中、偶然が凄いことに発展することもあるということですね。

でも、偶然とはいえ本来なら廃棄するものを試してみたヌネス氏のチャレンジ精神がなければ、ここまでアナエロビックが早く普及しなかったかもしれません。

そんな嫌気性発酵で精製された珈琲、興味のある方はぜひヴェルディのフルッタメルカドンをお試しください。

ブラジルの珈琲鑑定

2021年10月27日 

今回は、ブラジルにおける珈琲鑑定士の仕事について記載します。

店主は、ブラジルへ渡り、この鑑定士の資格をとりましたが、それはどのようなシステムで品質ごとの価格が決まっていくのかを知りたかったので、輸出国の基準を学ぶために鑑定士の講習を受け、資格を取得したというのがその理由です。

ブラジルにおける「珈琲鑑定士(クラシフィカドール)」は国家資格で、珈琲にグレードを付ける権限を持っています。単に「味・香り」だけで点数評価するのではなく、商取引において個々の豆の価格を詳細・適切に決める指標を作り、多岐にわたる要素で珈琲を評価します。

ブラジルにおける珈琲の格付けでは、以下(別表にしても可)の要素を各々鑑定します。

…………………………….

ブラジルの珈琲鑑定要素

1. Defeitos Intrínseco 内的な欠点

2. Defeitos Extrínsecos(impurezas) 外的な欠点(不純物)

3. Bebida 味

4. Peneira(formato da fava); Chato / Moka / Triangulo

スクリーンサイズ(形状);フラット/ピーベリー/トライアングル

5. Preparo(Via Seca e Via Umida) 精選(ナチュラル/ウオッシュド)

6. Seca / Cor / Aspecto / Torra 乾燥状態 / 色 / 見た目 / 焙煎具合

…………………………….

上記中で、1と2は「Tipo」(タイプ)と呼ばれ、3は「Grupo」(グループ)と称されます。そこに、スクリーンサイズ(大きさ)や形状、精選、乾燥状態と色・見た目の質が加わり、豆としての価値が決まることになります。

この「Tipo」は、サンプル300グラム中に含まれる豆の欠点数を算出し(下ページの別表参照)、まずTipo 2~Tipo 8までの7種類に格付けされます。

Tipo.2は最も良く、欠点数が4以下、Tipo.8は最も悪く欠点数が360以下になります。

欠点数360以上は規格外の豆として扱われます。

2〜8の「Tipo」の間には、さらに6種類の中間値が設けられ、それはTipo「2/3」や「4/5」と呼ばれます。

ブラジルでは、欠点数は26欠点以下のTipo 4がベースとなっており、価格はこのTipo.4を基準に決定されます。

次に「Grupo」です。これはアラビカ(Grupo 1、Grupo 2)、コニロン[ロブスタ](Grupo 3)という3つに分類されます。アラビカのGrupo 1はBebidas Finas「良い味」、アラビカのGrupo2はBebidas Fenicadas「フェノール系の味」という分類です。それぞれの風味評価については、別表をご覧ください。

Grupo3のコニロン[ロブスタ]は、ロブスタの特徴が出ているかどうかで味の優劣が判断されます。

豆のサイズは、網で振るい、スクリーン(網目のサイズ)という単位で測ります。

最大はスクリーン19(7.6mm)以上で、最小はスクリーン9(3.6mm)まで(種子が1つしかない稀少なピーベリーという丸豆はスクリーン8~13)が計測の対象となり、スクリーンサイズが大きいほど価格も高くなります。

色の区分は、下ページの表を参照してください。

ブラジルでは、農園が収穫した豆を自分の敷地内でストックすると、定温倉庫の維持費がかかることや、強盗に入られる恐れなどリスクがあるので、収穫後精選を終えたら、輸出業者(場合によっては中間取次会社)の倉庫へ持ち込みます。

倉庫では、受け入れた豆をすぐに鑑定してストックし、生豆を仕入れに来たエクスポーターとの価格交渉が行われます。そのときにこれらのTipoとGrupo、色やスクリーンなどが取引の条件として提示されます。

例えば、非常にグレードの高い豆を欲しがっている人は

「Tipoは2、Grupoは 1。中でもEstritamente Mole、カラーはVerde Azuladoのスクリーン17で、見た目はBon(良い)、乾燥状態はBoa(良好)を〇〇袋」というように指定して、価格交渉に挑みます。

一方で、大量販売用に安価なブレンド珈琲やインスタントの原料として買い付けたい人は、「Tipoは4/5から5、Grupo1とGrupo2を適度に混ぜて、Rio(薬品臭)をあまり感じられない程度に。スクリーンは15あれば良くて、カラーはAmareladoくらいで良いので、1袋〇〇セント以内に抑えてほしい」という風に交渉します。

その場合、なかなか単一農園の豆では要求に応えられない場合があります。すると珈琲鑑定士が再び登場して、ストックしている豆のデータから数種類の豆をブレンドして、オーダーに合ったロットを作り上げます。

スペシャルティコーヒーを扱う私たちからすると、あまり品質の良くない珈琲などは、鑑定の必要もないように感じます。

しかし、欠点豆が多いTipo4以下の豆や、風味があまりよくないGrupo 2の豆も、こうしてブレンドされて安価豆を求められる取引に有効活用されるのです。

さて、そんな珈琲鑑定士の資格を持っていると、ブラジルではまず食いっぱぐれることはないのですが、日本ではあまり役に立ちません。

しかし、商社が「ブレンドに最適」などと言って、ブラジルから輸入された比較的安価な豆を出して来たら、鑑定士の私は現地でどんな取引が行われたのか、だいたい予想することができます。それが本当に役に立つのかどうかは別として、珈琲鑑定士というブラジルの国家資格は、世の中で珈琲がどのように取引して価格決定され、流通しているのかを深く理解できる、とても良い資格だと私は思うことにしています。

珈琲鑑定データ集

2021年10月27日 

参考図表

内的欠点豆の種類と欠点数

外的欠点と欠点数

色の評価

風味評価

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欠点豆の画像(味に影響を及ぼす主要欠点豆)

Ardido アルジード:発酵豆 発酵やカビなどの最終段階、許容できないフレーバーを出す。

・

Verde ヴェルジ:未成熟豆 未熟な状態で収穫された豆、嫌な酸味を出す。

・

Concha コンシャ:貝殻豆 貝殻状に割れた豆

・

Preto プレット:黒豆 発酵やカビなどの最終段階、許容できないフレーバーを出す。

・

Preto Verde プレットヴェルジ:未成熟発酵豆 皮が付着し黒ずんで重酸っぱい味を出す。

珈琲の品種-1

2021年10月9日 

コーヒーの品種について語られるとき、よく「三大原種」と言う言葉が出てきます。

【arabica(アラビカ)】【robusta(ロブスタ)】【liberica(リベリカ)】の3種類を指す言葉です。

ただ、正確に言うと【robusta】は【canephora】に属する品種なので、本当は「canephora robusta(カネフォラ ロブスタ)」と言わなくてはならないのですが、多くの生産国では単に「ロブスタ」と言っているので、それが汎用語となっています。

そんな中、インドネシアと並び、ベトナムに次ぐカネフォラ生産国であるブラジルでは、カネフォラ品種のことを「ロブスタ」とは言わず「コニロン」と呼んでいます。

もし、「コニロン」という品種を見たら、それはブラジル産のロブスタ(カネフォラ)だと思えば問題ないかと思います。

また、リベリカ種はアフリカの一部で生産されていますが、その生産量は非常に少ないため、あまり出回っておらず、珈琲業界に携わる人の中でも、飲んだことのない人の方が多いかと思います。

しかし、最近ではアフリカだけではなく、マレーシアなどのアジア圏でもリベリカの生産が行われており、私は台湾へ行った折、台北の有名珈琲店でマレーシア産リベリカ種の花で作ったお茶を飲みました。

これが甘い香りとスッキリした芳香で、とても美味しかったのを覚えています。

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話がそれましたが、その3大原種の中でも酸味や香りが良いとされている「アラビカ種」について。

アラビカは、エチオピアが原産です。

その発見については2つの伝承があります。

ひとつめは、山羊飼いのカルディ少年が、赤い実を食べてハイになっている山羊を見て、自分もその実を食べてみたら、気分が高揚して元気になったことが珈琲発見とされる、所謂「山羊飼いカルディ」の伝説。

もう一つは、罪を犯したシェイク・オマールが追放の刑に処され、荒野をさまよっているときに見つけた木になっている赤い実を食べたら元気が湧いてきて、その実をもって故郷に戻ったところ、その実の効用が珍重され罪を許されたという「シェイク・オマール」の伝説。

珈琲発見にはこの二つの伝説がありますが、カルディ少年はキリスト教徒、シェイク・オマールはイスラム教徒。

どちらの宗教も、自分たちが発見したと主張したいため二つの伝説が語り継がれました。

でも、エチオピアはアフリカでは珍しいキリスト教の国だったことから、エチオピアでは、恐らくカルディの伝説が本当ではないかと思われています。

しかし、コーヒーを世界に広めたのはイスラム教徒だったことは皮肉かもしれません。

そんな、コーヒー伝搬の歴史を研究する人の中では、シェイク オマール説が有力視されていますが、そもそもシェイク オマールが本当の第一発見者だったのか、実はそれ以前にエチオピア人の間では食用されていたのではないか。

もっと言うと、カルディという少年がいたのかどうかすら定かではありません。

そんなわけで、アディスアベバの街には、カルディーズコーヒーはたくさんありますが、「オマールズコーヒー」はありません。

ちなみに、入り口には金属探知機を持ったガードマンがいて、入場時にチェックされます。

カルディーズコーヒーのみなさん。

カプチーノ。間違ってココアパウダーをひっくりかえしたようなココアパウダーの量、飲むとむせてしまいます。

そんなわけで、カルディ少年が発見したアラビカコーヒーですが、「原種」と言われるものの、遺伝子を調べて行くと、どうやら半分はカネフォラだということが分かってきました。

父方がカネフォラ、では母方は何かと言うと、今ではもう見られなくなってしまった【eugenioides(ユーゲニオイデス)】という品種が、自然交配したもののようです。

アフリカの中西部に広く分布していたカネフォラとアフリカ中東部に原生していたユーゲニオイデスが、ちょうどエチオピアあたりで自然交配して「アラビカ」が誕生しました。

コーヒーの品種は、現在主に流通しているものだけでも80種以上、少量生産されているものなども含めたら数百種類とも言われています。

それらの多くは、アラビカの中でも「ティピカ種」(アラビカ種の中でも、原種からかなり初期の段階で派生した品種)を源として、それが突然変異したものや土着品種となったもの、他のものと掛け合わせて作られたものです。

しかし、アラビカ種は同じアラビカ同士で掛け合わせた場合を除くと、カネフォラとの掛け合わせ以外は、なかなかうまくいかないというのが実情のようです。

※ コーヒーの原種は、アラビカ、ロブスタ、リベリカ以外にも多数あり、中には結実しないものもあるほど。

それは、アラビカの父親がカネフォラだからということに起因しているからでしょう。現在出回っている「ハイブリッド品種」は、ほとんどがアラビカとカネフォラの掛け合わせです。

さて、現在流通しているアラビカ種の多くは「ティピカ種」が源になっていると書きましたが、そのティピカよりも原種に近いのが、俗に言う「エチオピア在来種」

日本でエチオピア産の豆の品種を記載するときは、ほとんどが「在来種」としか書かれていません。

しかし、エチオピア在来種も実は非常に多くの種類があり、ジマにある珈琲研究施設では数字で管理されたものもありますが、多くは自生品種のためその土地土地のテノワールが作りだした品種だと言えます。

珈琲の品種-2

2021年10月9日 

よく「コーヒーの3大原種」と言われますが、これは「アラビカ」「ロブスタ(カネフォラ)」「リベリカ」の3つを指します。

しかし、知らなくてもいい・・・その1で書いた通り、アラビカはカネフォラとユーゲニオイデスが自然交配してできた品種なので、本来ならアラビカの前に「ユーゲニオイデス」を入れるべきかもしれませんが、残念ながら現在ユーゲニオイデス単体でのコーヒーは商業ベースで生産されていないので、実質的に上記3つの原種が正解なのでしょう。

そんな3大原種ですが、リベリカはほとんど出回っておらず、味もアラビカほど豊かではないため、主に世界市場で取引されているのは、アラビカとロブスタのみと言っても過言ではないかもしれません。

そして、私たちが最もよく口にする品種はアラビカ種。

スーパーで特売されるような安価なブレンドや、大手ロースターさんの普及価格帯ブレンドにはロブスタも使われていますが、ヴェルディで通常扱っているのはアラビカのみなので、このコーナーではアラビカの品種について書きたいと思います。

まず、アラビカ種は初期の段階で「ティピカ種」が主品種となり、ほぼ同時に「ブルボン種」がアラビカの双璧をなす品種となりました。

主に、この2つの品種が突然変異や自然交配、或いは研究所で人工的に他の品種と交配して多くの品種を輩出することになります。

それ以外で言えば、アラビカ種発祥の地と言われるエチオピアにおいては、ほぼ全ての豆を「在来種」の一言で片づけられてしまいます。

しかし、JARC(ジマ農業調査局)によって発見・認定された品種は多数あり、中でも「74シリーズ」と言われる管理番号74から始まる品種は人気が高い状態にあります。

そんな品種のことを書き始めたら、ものすごい量になってしまうので、細かい解説は来週から。

とりあえず、今までにヴェルディで使ったことのある品種や有名品種に絞って系統図を書いてみました。

この品種について「ティピカ系」「ブルボン系」「在来種系」「ハイブリッド系」に分けて、3~4回の連載で書いて行きたいと思います。

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