2022年5月号掲載
先月は、珈琲鑑定士とQグレーダーの違いについて述べました。
今回は、ブラジルの珈琲鑑定士の評価基準について書きたいと思います。
ブラジルにおける「珈琲鑑定士(クラシフィカドール)」は、珈琲にグレードを付ける権限を持った人に与えられる国家資格です。
単に「味・香り」について点数をつけて評価するのではなく、多岐にわたる要素で評価することにより、商取引において個々の豆の詳細な価格を適切に決める指標を作ります。
ブラジルにおける珈琲の格付けでは、以下の要素を各々鑑定します。
ブラジルの珈琲鑑定要素
1、Defeitos Intrinsecos 内的な欠点
2、Defeitos Extrinsecos(impurezas) 外的な欠点(不純物)
3、Brbida 味
4、Peneira(formato da fava); Chato / Moka / Triangulo
スクリーンサイズ(形状);フラット/ピーベリー/トライアングル
5、Preparo(Via Seca e Via Umida) 精選(ナチュラル/ウオッシュド)
6、Seca / Cor / Aspecto / Torra 乾燥状態 / 色 / 見た目 / 焙煎具合
この表の中で、1と2はTipo(タイプ)と呼ばれ、3はGrupo(グループ)と称されます。
そこに、スクリーンサイズや形状、精選、乾燥状態と色・見た目の質が加わり、豆としての価値が決まることになります。
タイプはサンプル300グラム中に含まれる欠点豆のスコアで決まります。(別表参照)
No.2が最も良く、欠点数が4以下。一方No.8は最も悪く欠点数が最大360になります。
欠点数360以上は規格外として扱われます。
各タイプの間には、中間値が設けられ、タイプ「2/3」や「4/5」と呼ばれます。
ブラジルにおいては、タイプ4(No.4)がベースとなっており、相場の価格はNo.4を基準に決定されます。(タイプ4の欠点数は26欠点以下)
グループは、3つに分かれており、グループ1と2はアラビカ。グループ3はコニロン(ロブスタ)とされています。
GrupoⅠ-Arabica(アラビカ・グループⅠ)はBebidas Finas(良い味)に分類され、GrupoⅡ-Arabica(アラビカ・グループⅡ)はBebidas Fenicadas(フェノール系の味)に分類されます。
グループⅠ、グループⅡの風味評価については、別表をご覧ください。
グループⅢはコニロン(ロブスタ)で、ロブスタの特徴が出ているかどうかで味の優劣を判断されます。
スクリーンサイズは、網でふるってサイズを決めます。
最大はスクリーン19以上、以下スクリーン9まで(ピーベリーはスクリーン8~13)が計測の対象となり、スクリーンサイズが大きいほど価格も高くなります。
色の区分は、別表を参照してください。
ブラジルでは、農園が収穫した豆を自分の敷地内でストックしていると、強盗に入られる恐れがあることや、定温倉庫を維持するには費用がかかることから、収穫後精選を終えたら、輸出業者(場合によっては中間取次会社)の倉庫へ持ち込みます。
倉庫では、受け入れた豆をすぐに鑑定してストック。生豆を仕入れに来たエクスポーターとの価格交渉が行われますが、そのときにこれらのタイプとグループ、色やスクリーンなどが取引の条件提示として使われます。
例えば、非常にグレードの高い豆を欲しがっている人は
「タイプは2、グループ1の中でもEstritamente Mole、カラーはVerde Azuladoのスクリーン17upで、見た目はBon(良い)、乾燥状態はBoa(良好)を〇〇袋」というように指定して、価格交渉に挑みます。
一方で、大量販売用に安価なブレンドコーヒーやインスタントの原料として買い付けたい人は、「タイプは4/5から5、グループⅠとグループⅡを適度に混ぜて、Rioをあまり感じられない程度に。
スクリーンは15あれば良くて、カラーはAmareladoくらいで良いので、1袋〇〇セント以内に抑えてほしい」という風に交渉します。
その場合、なかなか単一農園の豆では要求に応えられない場合があります。すると珈琲鑑定士が再び登場して、ストックしている豆のデータから数種類の豆をブレンドして、オーダーに合ったロットを作り上げます。
スペシャルティコーヒーを扱う私たちからしたら、あまり品質の良くない珈琲など鑑定の必要もないように感じます。
しかし、欠点豆が多いタイプ4以下の豆や、風味があまりよくないグループⅡの豆も、こうしてブレンドされて安価豆を求められる取引に有効活用されるのです。
さて、そんな珈琲鑑定士の資格ですが、ブラジルにいればこの資格を持っていると、まず食いっぱぐれることはないのですが、日本ではあまり役に立ちません。
しかし、ブラジルから輸入された豆を見たとき、単一農園ものは別として商社が「ブレンドに最適」などと言って比較的安価な豆を出して来たら、その豆を私が鑑定することで、ブラジルでどんな取引が行われたのか、だいたい想像がつきます。
それが本当に役に立つのかどうかは別として、珈琲鑑定士というブラジルの国家資格は、世の中の大枠の中で、珈琲がどのように取引され、価格決定して流通しているのかを深く理解するには、とても良い資格だと思うことにしています。