先週末の芸大店、通信教育部の卒展が開催される中、金曜日は大学の卒業式、土曜日は通信教育部の卒業式、そして日曜日は卒展最終日に加え、市川猿之助さんの公演とあって、息つく間もなく3日間が過ぎて行った。
そんな月曜日、祭りの後の静けさと言うか、恐らく非常に穏やかな一日になるのではないかと予想していたら、あれ?あれ?と言う感じで、想定外に多くのお客様がお越しくださった。
4月第一週は、春秋座で「京おどり」が開催されるので、イベント狭間の10日間、イベント期間中は開催できない芸大店のセミナーも予約を再開したとたん、全日程があっという間にご予約で埋まった。
そのセミナー再開初回は、「焙煎セミナー」と「焙煎度合い・精選方法による味の違い飲み比べ」を同時に受けたいというリクエスト。
このお客様は、今月上旬に「ハンドドリップによる抽出」と「抽出器具による味の違い飲み比べ」も受けてくださっていて、今日で基本セミナーコンプリートということになった。
通常、焙煎度合い違いによる飲み比べは、中煎りと深煎り2種類を比較して頂くのだが、今回は焙煎セミナーと同時実施だったので、もうちょっと幅を広げて4種類のみ比べてもらった。
ちなみに、通販では 8段階飲み比べセト も好評販売中。
下写真のような極々浅煎り~深煎りまで8種類を手軽に飲み比べられるようドリップバッグにして販売しておりますので、よろしければお試しください。
で、今回の焙煎セミナーでは、お客様のご希望の豆「グァテマラ」を中深煎りに仕上げることになったのだが、その途中で取りだした豆を飲み比べて頂くことにして、飲み比べて頂いたのはこんな4種類。
挽いた香りは、ピーナツのような香ばしさなので、そんな味と思われたようだが、このあたりは「お茶」のような味がする。
実際飲んで頂いたら「本当にお茶のような味」と納得して頂けた。
これ、何も言わずに出して飲んでもらった後、「コーヒー」と言っても信じないだろうけど、「コーン茶です」と言ったら「あぁ、そうね」となりそう。
次に、1ハゼのピークあたり。
1ハゼ前の豆を取りだして香りをかいでもらったら、コーヒーと言うよりナッツのような香りがするのだが、このあたりからコーヒーの香りになってくる。
飲んでいただいた感想は、「ちょっと生臭い酸っぱさ」
続いて、最近流行りの、俗に言うサードウェーブ系の焙煎度合いである1ハゼ終了~2ハゼ前
これは、一言「すっぱい」。
そして、今回の焙煎セミナーで煎り止めとなった焙煎度合い「中深煎り」
こちらを飲んだお客様は「美味しい」と。
こうして飲み比べて頂くと、どうしてヴェルディが、このグァテマラを中深煎りにしているかご理解いただけたと思うのだが、最後に受けた質問で、こんなことを聞かれた。
最近、評価の高い店や人気のお店でコーヒーを飲むが、自分では美味しいとは思えないのだけど、他の人のレビューなどを見ると「フルーティー」と評価が高い。
自分は「酸っぱい」としか思えないのだが、これは自分の口が悪いのだろうか?
実は、セミナーをやっているとこの質問を受けることが多い。
いや、セミナーだけではなく、初めてコーヒー豆をお求めにご来店下さったお客様から「酸味のコーヒーは苦手なんだけど・・・」から続く質問として、上記のようなことを聞かれることも少なくない。
そこで今回は、せっかく飲み比べをして頂いたので、それを参考に説明したのだが、実は1ハゼ終了あたりの焙煎度合いは、私たちが豆のクオリティーを判断するための「カッピング」と言われる味見をするときに用いられる焙煎度合い。
これ以上深くしてしまうと、苦みも出てくるので、この豆の持つ酸味の質などがどのようなものか分かりにくくなってしまうので、カッピングする場合は、このあたりの焙煎度合いが正解なのだが、それはあくまでポテンシャルの問題。
その焙煎度合いにおける、その豆の味が良いか否かという判断ではないわけである。
なので、私たちとしては、その豆のポテンシャルをどこまで引き出せるか、どこまで美味しくできるかが仕事と言うことになる。
ただ、販売する側(商社や販売会社等)は、カッピングをした段階で、その豆のポテンシャルを表記する。
「オレンジのような」とか「クリーミー」とか「ビターチョコのような」とか、中には「キウイ」とか「メロン」なんて表現もある。
が、それはあくまで上手く焙煎したら、そういった味を引き出せる可能性があるというだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだが、焙煎する者が、商社や販売会社が書いた評価をそのままその「この豆の味」と言ってしまい、それをお客様が鵜呑みにして信じてしまい、それを高評価してしまうとややこしいことになる。
日本人の心理がよく分かる事例として、日本人がマスクを外さない理由として、「感染予防」ではなく「皆が外さないから」というものが上位に来るのと同様、他の人が評価していると、ついそれに同意してしまうという側面がある。
商社が言う風味は、あくまで豆の持つポテンシャルであって、それを全ての焙煎者が無条件で引き出せることを保障しているものではない。
で、質問に対する結論としては、私も最近流行りの焙煎度合いについて、「美味しいか否か?」と訊かれたら「私の好みの味ではない」としか返事ができないし、この質問をされたお客様の口が悪くて美味しさを理解できないのであれば、私をはじめヴェルディのスタッフ一同みんな口が悪いことになる。
ということになった。
もちろんコーヒーは嗜好品なので、極浅煎りのコーヒーが持つ酸味を最大限に活かした焙煎度合いが好きな方がいらっしゃることも分かるし、それらの人たちの「口が正常ではない」とは決して言わない。
嗜好品の世界は、好き・嫌いなのだから、どんな味についてもそれを好きだと言う人を否定すべきではない。
でも、自分が飲食するものの「好き・嫌い」、「美味しい・美味しいと思わない」については、個人の主観なのだから間違っているということを考える必要ないと私は思う。
が、提供する側は、可能な限り普遍的に美味しいもの、良いものを作ろうと、日々努力しなくてはならないわけで、こうしてお客様の声を耳にすると、しっかりと焙煎をすることの大切さを再認識するのであった。
ということで、ものすごく長くなってしまった日記にお付き合いいただき有難うございました。