今朝も寒かったですね。
でも、昨日は風が強くて、特に川沿いは風を遮るものが何もないので恐ろしく寒く感じました。
今日は、昨日と比べると風もなくてそういう点での寒さはなかったものの、日の出前の底冷えは、外に出た瞬間歩くのを躊躇うほどでした。
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ところで、今まで土曜日は日記の定休日でしたが、芸大店長の山下が土曜日の日記を担当することになったので、これからは休みなくアップされる(はず)ことになります。
そこで、日曜日は私が珈琲のことについて、ちょっと深い話を何か一つ書こうかと思います。
でも、内容的には知らなくても全く問題なく珈琲を楽しめる、けど、知っていたらちょっと物知りになった気分になれるというものにしようと思うので、題して「知らなくてもいい珈琲の話」第一回目は「アラビカ種の発祥」について。
ただ、プロに教えるための内容ではないので、かなり簡略化して書きます。
きちんと勉強している方が読んだら、突っ込みたくなる部分もあるかと思いますが、あえて簡単に説明しているので、そのあたりはご了承ください。
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コーヒーの品種について語られるとき、よく「三大原種」と言う言葉が出てきます。
【arabica(アラビカ)】【robusta(ロブスタ)】【liberica(リベリカ)】の3種類を指す言葉です。
ただ、正確に言うと【robusta】は【canephora】に属する品種なので、本当は「canephora robusta(カネフォラ ロブスタ)」と言わなくてはならないのですが、多くの生産国では単に「ロブスタ」と言っているので、それが汎用語となっています。
そんな中、インドネシアと並び、ベトナムに次ぐカネフォラ生産国であるブラジルでは、カネフォラ品種のことを「ロブスタ」とは言わず「コニロン」と呼んでいます。
もし、「コニロン」という品種を見たら、それはブラジル産のロブスタ(カネフォラ)だと思えば問題ないかと思います。
また、リベリカ種はアフリカの一部で生産されていますが、その生産量は非常に少ないため、あまり出回っておらず、珈琲業界に携わる人の中でも、飲んだことのない人の方が多いかと思います。
しかし、最近ではアフリカだけではなく、マレーシアなどのアジア圏でもリベリカの生産が行われており、私は台湾へ行った折、台北の有名珈琲店でマレーシア産リベリカ種の花で作ったお茶を飲みました。
これが甘い香りとスッキリした芳香で、とても美味しかったのを覚えています。
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話がそれましたが、その3大原種の中でも酸味や香りが良いとされている「アラビカ種」について。
アラビカは、エチオピアが原産です。
その発見については2つの伝承があります。
ひとつめは、山羊飼いのカルディ少年が、赤い実を食べてハイになっている山羊を見て、自分もその実を食べてみたら、気分が高揚して元気になったことが珈琲発見とされる、所謂「山羊飼いカルディ」の伝説。
もう一つは、罪を犯したシェイク・オマールが追放の刑に処され、荒野をさまよっているときに見つけた木になっている赤い実を食べたら元気が湧いてきて、その実をもって故郷に戻ったところ、その実の効用が珍重され罪を許されたという「シェイク・オマール」の伝説。
珈琲発見にはこの二つの伝説がありますが、カルディ少年はキリスト教徒、シェイク・オマールはイスラム教徒。
どちらの宗教も、自分たちが発見したと主張したいため二つの伝説が語り継がれました。
でも、エチオピアはアフリカでは珍しいキリスト教の国だったことから、エチオピアでは、恐らくカルディの伝説が本当ではないかと思われています。
しかし、コーヒーを世界に広めたのはイスラム教徒だったことは皮肉かもしれません。
そんな、コーヒー伝搬の歴史を研究する人の中では、シェイク オマール説が有力視されていますが、そもそもシェイク オマールが本当の第一発見者だったのか、実はそれ以前にエチオピア人の間では食用されていたのではないか。
もっと言うと、カルディという少年がいたのかどうかすら定かではありません。
そんなわけで、アディスアベバの街には、カルディーズコーヒーはたくさんありますが、「オマールズコーヒー」はありません。
ちなみに、入り口には金属探知機を持ったガードマンがいて、入場時にチェックされます。
カルディーズコーヒーのみなさん。
カプチーノ。間違ってココアパウダーをひっくりかえしたようなココアパウダーの量、飲むとむせてしまいます。
そんなわけで、カルディ少年が発見したアラビカコーヒーですが、「原種」と言われるものの、遺伝子を調べて行くと、どうやら半分はカネフォラだということが分かってきました。
父方がカネフォラ、では母方は何かと言うと、今ではもう見られなくなってしまった【eugenioides(ユーゲニオイデス)】という品種が、自然交配したもののようです。
アフリカの中西部に広く分布していたカネフォラとアフリカ中東部に原生していたユーゲニオイデスが、ちょうどエチオピアあたりで自然交配して「アラビカ」が誕生しました。
コーヒーの品種は、現在主に流通しているものだけでも80種以上、少量生産されているものなども含めたら数百種類とも言われています。
それらの多くは、アラビカの中でも「ティピカ種」(アラビカ種の中でも、原種からかなり初期の段階で派生した品種)を源として、それが突然変異したものや土着品種となったもの、他のものと掛け合わせて作られたものです。
しかし、アラビカ種は同じアラビカ同士で掛け合わせた場合を除くと、カネフォラとの掛け合わせ以外は、なかなかうまくいかないというのが実情のようです。
※ コーヒーの原種は、アラビカ、ロブスタ、リベリカ以外にも多数あり、中には結実しないものもあるほど。
それは、アラビカの父親がカネフォラだからということに起因しているからでしょう。現在出回っている「ハイブリッド品種」は、ほとんどがアラビカとカネフォラの掛け合わせです。
さて、現在流通しているアラビカ種の多くは「ティピカ種」が源になっていると書きましたが、そのティピカよりも原種に近いのが、俗に言う「エチオピア在来種」
日本でエチオピア産の豆の品種を記載するときは、ほとんどが「在来種」としか書かれていません。
しかし、エチオピア在来種も実は非常に多くの種類があり、エチオピア国内では全て数字で管理されています。
そのあたりについて、書き始めたらすごく長くなってしまうのでまたこんど。
次回は、エチオピア在来種について、そしてエチオピア産の豆のトレーサビリティーについて書きたいと思います。