知らなくてもいい珈琲の話も4回目。
今回は、エチオピアという国の珈琲と言うより、ちょっとお金の話をいたします。
が、正直今回は本当に知らなくても全く問題ない、要するに「どうでもいい」話なのに、けっこう長くなるので、どうでもいい話に付き合う余裕はない、という方はここでご退出されることをおすすめします。
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さて、先週も書いた通り、エチオピアは世界の中でも最貧国のひとつで、一人当たりの月給は平均4,500円。
日本だと、高校生が5時間ほどアルバイトすればもらえる程度の金額です。
しかしこれは、GNP から計算しているので、ものすごくリッチな人から、ものすごく貧しい人まで全てを平均化した金額になります。
零細農家の生産量は年間400~500kg、間をとって450kgとしましょう。
市場での買い上げ価格が概ね8ブル(約40円)/ kg なので、その一家が珈琲専業であれば年収は約18,000円=月収1,500円程度になってしまいます。(一人当たりではなく、一家で、です。)
すると、子供たちは、こんな服を着ることになってしまいます。
もし日本で、ファッションではなく、これしかないからこんな服を着ている人と出会ったとしたら、こんな笑顔で明るく振舞ってはいないのではないでしょうか。
この時点で、日本の常識は全く通用しないことが分かります。
日本で、最高級のエチオピア豆を購入したら、100gで1,000円前後します。
つまり、日本におけるエチオピアの豆100gの値段は、同国零細農家の世帯収入の実に2/3にあたります。
その数字だけを捕らえて、「フェアトレードすべし!」と言うことは簡単です。
しかし、産地よりも少し都会に暮らす人たち、つまり零細農家の人たちより少し収入の多い人たちの表情や態度は、むしろギスギスしていて、田舎の子供たちのような笑顔が見られないことの方が多かったのも事実です。(もちろん、首都のインテリ層はまた違いますが)
洋の東西に関わらず、都会に住んで、そこそこの衣食住を維持するためにはお金がかかります。
自分がお金を使っているようでいて、実はお金のために振り回され、自分の意志とは関係なく無理をしなくてはならない、ある意味「お金に使われている」のではないかと感じるときがあります。
そんなとき、ふと田舎で畑でも耕しながら、のんびり晴耕雨読の暮らしもいいなぁ、と思ってしまうことがあります。
実際には、農業の大変さを実体験として持っていないから、そう思えるだけかもしれませんが、(要は隣の芝は青い)でも、そんなとき、「豊かさって何だろう?」と考えてしまうわけです。
話がそれましたが、もし、完全なフェアトレードを実現させ、エチオピアという国全体の構造が変わらないまま、零細農家の収入だけが先進国の農家並みになったとしたら、もしかすると、この子供たちの笑顔は「屈託のない笑顔」から「卑しい笑顔」に変わり、やがてエチオピアの珈琲産業そのものが根本から崩壊してしまうかもしれないと思うのです。(そう思うに至る理由を書きはじめたら、連載が永遠に続くので、ここでは割愛します。)
さて、ここまでは前置き。(マジ、今回長くなりそう)
エチオピアのコーヒー栽培は、零細農家の比率が高く、その人たちの世帯収入が年間18,000円程度なのに、国全体の平均は一人当たり年間55,000円.
そのレベルまで引き上げようと思ったら、かなりリッチな人がいないと無理になります。
そのリッチな人は、エチオピアの珈琲産業の中で言えば、「輸出業者」にあたると言っても過言ではないでしょう。
同時に、輸出業者は単に海外バイヤーとの取引で得る以上の収入を得ている人が多いのです。
それはどうしてかと言うことを書く前に、エチオピアの首都、アディスアベバの街を見渡してみる必要があります。
近代的な街並みで、奇麗な車も多くてスタイリッシュな女性が歩いている。
余談ですが、エチオピアの女性はすごく美しい人が多く、また男女の性別関わりなく、足が長くてすらっと細い人が多いのです。
ちょっとうらやましいかもしれない。
一見先進国の街並みのように見えても、ほんの通り1~2本歩くと・・・
こんな感じの風景に変わり、さらに一本わき道に入ると・・・
遠くに高いビルは見えますが、どこのスラムだ?という光景が広がります。
アディスアベバの中心地から少し郊外へ行くと、新興住宅街が目につきます。
そのすぐ先には、もう一つ住宅街を作ろうとしているように見える場所もあるのですが・・・
工事は止まったままで、いつ完成するかも、再着工できるのかも分からない建設中のマンションが並びます。
街を歩いていると、左のような近代的な建物がある反面、完成したビル以上に多くの建設途中で投げ出されたようなビルが見られます。
エチオピア、と言うか、アディスアベバは現在ものすごい建設ラッシュ。
その建設ラッシュ、実は途中でストップしてしまっているビルが多いというあたりにエチオピアのお国事情があります。
同時に、それがコーヒーに関わる様々な法律にも影響を与え、場合によっては先進国なら当たり前に行われている商慣行すら、それを実行すると逮捕されてしまう、なんてことに繋がりかねないのです。
事実、今から13~14年前のこと。
エチオピアの輸出業者の中でも売上TOP10の中から5社、TOP30の中から10社の社長が逮捕・収監されるという事件が発生しました。
その理由を簡単に言うと、[ECXで購入したときの価格と比べ、国際相場が低かったため、NYのアラビカ相場が上がるまで豆をストックして、相場が上がったときに売りに出したから。]
資本主義社会で言えば、安いときに購入して高いときに売るというのは商売人として当然のこと。
でも、それで逮捕されてしまうというのはどういうことなのでしょうか?
そのあたりを説明しようかと思ったのですが、まだまだ長くなってしまうので、続きはまた来週。
できれば、来週でエチオピアの連載には一区切りつけたいと思っておりますが、さぁ、どうなることやら。