自家焙煎珈琲 カフェ・ヴェルディ

カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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スペシャルティーコーヒー-1

2023年10月24日 

今日の日記は、ヴェルディの従業員向けに私が考える「スペシャルティーコーヒー」について述べるものであり、必ずしも一般の方に読んでほしいものではないことを最初に申し上げます。

むしろ読まないで頂きたいほどです。

従って、現在の世の中で、特にアメリカの極めて資本主義的・利益最優先の経営をしているコーヒーショップおよび、それがどういうことかもわからず模倣している近年乱立するスペシャルティーコーヒーを前面に出しているコーヒーショップの考え方とは似て非なるものであり、当該事業者には否定される(と言うより、完全に敵に回す)内容であることをご理解の上、読んでみたい方だけ読んで頂ければ幸いです。

また、恐らく後編においては、「それならお客様にどう説明するのか」という部分は、私の本音であり、嫌な思いをされる方も少なくないと思われます。

特にスペシャルティーコーヒーを前面に出す同業者には、耐えがたいことを言う可能性もありますので、そういう方はお読みにならないことを強くお勧めいたします。

このような注意喚起にも関わらず、読んでしまって文句を言われても、私は一切応じませんので、どうぞご了承ください。


髙島屋店の営業もちょうど1週間経って、スタッフの皆は積極的にお客様とコミュニケーションをとって販売にあたっている中、何名かのお客様から「ここに並んでいる豆は、全てスペシャルティーコーヒーなのか?」という質問を受けたのだが、どうなのか?と、スタッフに訊かれた。

それに対して、その場で私がスタッフに説明をし始めたら、営業どころではなくなってしまう。

そこで、今日からの日記で説明するので読んでおくようにと言ったので、以下記載する。

そもそもスペシャルティーコーヒーとは何なのか?

まず、スペシャルティーコーヒーというものの定義については、下記SCAJ(日本スペシャルティーコーヒー協会)がHPに記載しているので、それを読んでいただきたい。

SCAJのWeb site

これを読んで、どう思うだろうか?

どこにも明確な判断基準は示されていない。

と言うか、コモディティコーヒー(日常的に飲用されるもので、他社製造のものでも代替可能なコーヒー)とは違うと言いつつ、その境界線は個々の感覚に頼っているように思える。

そこで、「スペシャルティコーヒーに適用可能な判定の尺度」の部分に書かれている各項目について私見を述べさせていただく。

1、「カップ・クオリティのきれいさ」

この項目は、要するにヴェルディが開業した当初からヴェルディの特徴として言っている「雑味がなく、後味がすっきりしている」ということだと解釈される。

ヴェルディ開業当初の20年前は、まだ「スペシャルティーコーヒー」という言葉そのものが、やっと出始めた時期であり、グァテマラなど中米の国でCOE(カップ・オブ・エクセレンス)が始まったころだったので、コモディティコーヒーとスペシャルティーコーヒーを区別するような環境ではなかった。

そこで、ヴェルディはバッハの田口護氏の教えに従い、【良い生豆】(田口護氏が良いと思った豆)を仕入れて、【ハンドピック】で、良い豆の中から本当に良い豆だけを選び(悪い味を出す豆を取り除く)【豆の芯までしっかり火を通しつつ、各々の豆に応じた適切な焙煎】をして【新鮮なうちに提供】することで、雑味なく後味のすっきりとしたコーヒーを提供してきた。

少なくともヴェルディのコーヒーは、どれをとっても決してカップ(抽出液)に雑味やトゲのある苦み、攻撃的な酸味(酸味と言うより酸っぱみ)のあるコーヒーは存在し得ないので、「カップ・クオリティのきれいさ」という点においては全てスペシャルティーの基準を満たしていると言える。

ただし、それは「生豆がスペシャルティーだから」というのではなく、「ヴェルディのクオリティーに対するポリシーとして」だと言うことを胸に刻んでほしい。

2、「甘さ」

ここで言う甘さとは、科学的に計測した豆に含まれる糖質の量ではなく、熟度(収穫の折に完熟したものを採っているかどうか)と均一性および、他の成分との相互関係における甘みと言われている。

一方で、【辛さのある苦味、刺激的な酸味、強い汚れ、渋み等が有ると甘さを感じにくくなる。】と記載されているが、これは上記の「きれいさ」を遵守していれば、存在し得ないネガティブな風味特性なので、ヴェルディのコーヒーにおいては考える必要がない。

では、熟度と均一性はどうかと言うと、これこそ私が産地へ出かけてしっかりと農園を視察する理由の一つと言える。

当然、仕入れる豆全てをチェックできないが、仕入れさせて頂く輸入商社の現地で買い付けをする担当者が、農園に対してどのように指導しているのか、また、どのような基準で取り扱う豆を決めているのか、そのあたりのコンセンサスを現地でしっかりとることで、私が望むハーヴェスト(収穫)レベルを保っているものを扱っているかをチェックして、しっかりと仕入れに活かしている。

左から、まだまだ未熟な豆、真ん中が完熟、その右隣は熟度が高く甘みが強い可能性もあるが、均一性には欠ける。

その隣のブラックオリーブのようになっているものあたりからは、熟しすぎ。

ダメな収穫
かなりレベルの高い収穫
お手本のような収穫

一方で、どんなに素晴らしいポテンシャルを持った豆でも、焙煎で活かすことも殺すこともできることは、ヴェルディのスタッフであれば当然既知のことと思う。

ヴェルディでは、特に私がバッハグループを脱退した後は、田口氏(他人)に頼ることなく、自分の目で直接見て、人と接して、判断して、高いポテンシャルの豆を仕入れて、しっかりと火を通して甘みを引き出して提供している。

3、「酸味の特徴評価」

恐らく、アメリカ人が利益優先で考える【酸味】とヴェルディが主張する【酸味】は全く異質なものであり、利益を取るための【酸味】は、ヴェルディの定義で言うと【酸っぱみ】にあたる。

【酸っぱいコーヒー】を判断する最も分かりやすい方法は、焙煎後2週間以内のものをドリップで抽出することである。

ヴェルディの豆は、浅煎りであっても、お湯をかけたら美味しそうなハンバーグのようにきれいに膨らむ。

一方で、アメリカ人が利益優先で焙煎したコーヒーは、お湯をかけてもあまり膨らまず、3投目あたりからは、泡すら出なくなる。

では、「利益優先の焙煎」とは何なのか。

下の写真を見て頂きたい。

これは、同じ豆を8段階に分けて煎り止めして、それぞれ100粒ずつとったときの量である。

一番左は生豆、その後左から順に、下の写真の①~⑧と進んで行く。

焙煎を進めると、水分が飛んでいくのでだんだん重量は軽くなっていく。

コーヒー豆は体積ではなく重量で販売されるのが一般的なので、焙煎を深くするほど原価率は高くなる。

1ハゼ終了時点のものと、2ハゼ後半では、5~8%も重量が変わる。

飲食店において、原価率を5~8%下げると言うのは、よほどクオリティーを落とさない限り至難の業である。

が、焙煎を浅くすると、いとも簡単にそれが達成できてしまう。

ちなみに、上の写真の①~⑧の風味特性は下の図のような感じである。

俗に言うアメリカ資本主義を体現している「サードウェーブ」と呼ばれるジャンルのコーヒーは③あたりで煎り止めするのが一般的。

対してヴェルディは⑤~⑧で煎り止めている。

つまり、酸味ではなく「酸っぱみ・渋み・エグみ」が最高潮に達したところで煎り止めているのがサードウェーブの特徴と言えるのだが、先述のSCAJが言う酸味の定義には、こう書かれている。

反対に、刺激的な酸味、不快な印象度を与える酸味、爽やかさ・キレの無い酸味、劣化した嫌な酸味は、スペシャルティコーヒーには有ってはならない。

本来「有ってはならない」ネガティブな酸味(ヴェルディ的には「酸っぱみ」と表現している)があるにもかかわらず「スペシャルティコーヒー」を名乗っているのは、要するにスペシャルティーコーヒー協会のお偉方も儲けたいという意欲が旺盛であるため、サードウェーブ的な酸味(ヴェルディ的には酸っぱみ)を「良質でフルーティーな酸味」と言って消費者をごまかしている方が都合が良い上、「アメリカのすることは素晴らしい」という戦後日本の誤った意識を上手く利用していると言っても過言ではないであろう。

しかし、もしかすると、あの強烈で刺激の強い酸味(ヴェルディ的には酸っぱみ)を心から美味しいと思って焙煎している人もいるかもしれない。

コーヒーは嗜好品、誰がどんな味を美味しいと言っても、それを否定することはできない。が、ヴェルディにご来店下さるお客様の多くは「酸っぱいコーヒーは嫌」という方の方が「酸っぱいコーヒーが欲しい」と言う方より圧倒的に多く、特にサードウェーブ系のコーヒーは飲めないと言う方は少なくない。

なので、もしかすると、利益率を上げたいとか、アメリカ人が美味しいから、そうなんだろう、と言う考えではなく、心から美味しいと思って酸味の強い(ヴェルディ的には酸っぱい)コーヒーを作っている人もいるかもしれない。

そうであれば、その方には大変失礼なことを言って申し訳なく思う。

さらにもう一つ、原価率を落とす以外に、酸味の強い(ヴェルディ的には酸っぱい)コーヒーを作ってしまう要因があると思われるが、それについては後編で述べるので、場合によっては利益のためではなく、別の理由で酸味を強くしている可能性もあることは述べておく。

しかし、私の経験上、芯まで火が通っていない(新鮮にもかかわらず膨らまない)豆は、何杯か飲むと胃が痛くなるほど攻撃的なコーヒーと言える。

正直、あまり体に良いとは思えない。

人の口に入るものは、「美味しい」「好き」と言う前に「安全」が第一。

ヴェルディは、1日10杯飲んでも負担が少ないコーヒーを目指しているので、やはり体に対して攻撃的なコーヒーは作りたくない。

つまり、ヴェルディは、例え原価率が上がっても、決して自分が安全で、美味しいと思えないものは作らないし、その考えを間違えた焙煎はしない。

それをしてしまうと「本当に良いものをお客様に提供する」という私のポリシーを変えることになるので、そこだけは絶対に譲ってはならない一線である。

4、口に含んだ質感

これも、しっかりと芯まで焙煎できていれば、ほとんどの場合大丈夫なのだが、実はこの部分は抽出に左右されるところが大きい。

スタッフの皆には、しっかりと抽出技術を身に着けて、ふくよかでいて丸みがあり、香りが立ちながら、後味にキレのあるコーヒーを抽出できるよう不断の努力をして頂きたい。

と言うことで、けっこう長くなってしまったので、【5】以下については「中編」で解説したいと思う。

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