マンデリンという名称をつける条件は以下の2点。
スマトラ島の北部~中部の産地で採れたアラビカ種であること。
スマトラ式精選(Wet hull)によって処理されたこと。
北部のアチェやリントンは、マンデリンの産地として古くから知られているが、最近ではリントンの南部にある「ポルン」という地域や、さらに南のスマトラ島中部にあるパダン、このパダンで採れた豆は、昔からマンデリンとして出荷されていたものの、リントン地域のものと混ざって流通していたため、地域的には離れているものの「リントン産」として世に出ていた。
そのパダンを中心としたエリアで作られる豆の中でも、「クリンチマウンテン」は、ある意味新興産地、と言うか、近年仲買人がしっかりとトレースをとって、標高毎に買い付けるなど、しっかりとしたルートを開拓していることから、一般で出回るアチェやリントンよりもしっかりとしたトレーサビリティーとクオリティーが担保された豆であることが多い。
それだけに、アチェやリントンの所謂「マンデリンG1」と比べると、クリーンさとクリアさという面で一歩抜きんでているところがある。
いっとき、このクリンチマウンテンは「マンデリン」と呼んでよいのかどうかという議論が交わされていたが、現在では「マンデリン・クリンチマウンテン」と呼ぶことに問題はないという解釈が主流になっている。
同様に、新興の輸出業者によって開拓されたリントン南部の「ポルン」も、一般的なリントンと比べるとトレーサビリティーがしっかりしており、精選時の繊細な管理も手伝って、マンデリンとは思えないほどのクリーンカップを実現している。
正直、豆面を見ると、10年前のマンデリンと比べて非常にきれいで、精選がどれほど繊細に行われているかが見て取れる。
そんなクリンチマウンテンやポルンをヴェルディでも販売しているのだが、昔からのマンデリン好きにとっては、物足りなさを感じるという意見も聞かれる。
独特のアーシーさ、ちょっと草のような香りとふっと感じる柑橘系の風味が弱いというわけである。
ある意味、栽培から収穫、精選まで徹底していくと、味はクリアになるが、嗜好品として昔からあった風味(場合によっては雑味)がなくなってしまうということもある。
私もハンドピックをしていると、昔のマンデリンは、けっこうな欠点豆が多かったので、ハンドピックに苦労する豆ベスト5には入っていた。
が、最近のポルンやクリンチマウンテンは、逆に欠点豆がほとんどなく、ハンドピックが楽な豆ベスト5にはいるくらい。
昔のマンデリンの味、正直言うと私も独特な風味(今となっては若干雑味の感も否めないが)も好きだったが、さて、後戻りするかどうか・・・
なかなか悩ましい豆でもある。
(気が向いたら、さらに深掘りへと続く。多分、しばらく期は向かないですが)