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カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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知らなくてもいい珈琲の話

知らなくてもいい珈琲の話-その23【ゲシャヴィレッジ】

2021年7月11日 

知らなくてもいい珈琲の話、本来なら今回はハイブリッド種について書くはずでした。

しかし、明日より下鴨本店18周年記念のプレセールとして「エチオピア・ゲシャヴィレッジ・ゲイシャウォッシュド」を18周年にちなんで通常価格より18%OFFで販売するので、そのゲシャヴィレッジについて書こうかと思います。

まず、ゲイシャ種は、「ゲシャヴィレッジ」で発見されたことから、地名が品種の名称になったことは多くの方がご存知でしょう。

発見されたのは80年以上前ですが、非常に生産性が悪くコスタリカにある農業研究センターで細々と研究されている程度でした。

しかし、2004年にパナマのエスメラルダ農園のゲイシャがベスト・オブ・パナマのコンテストで絶賛され、当時のオークション落札金額の史上最高額をたたき出し、一躍有名になり、スペシャルティコーヒー業界では「ゲイシャ前・ゲイシャ後」と言われるほど、世の中のコーヒー全体に与えた影響は計り知れません。

ちなみに、2017年のパナマにおけるゲイシャの最高落札額は601$/lb(15万円/1kg)が記録されています。

エチオピアでは、ゲイシャ種の多くがナチュラル精選(チェリーを果肉がついたまま天日乾燥する方法)されていますが、今回は、少量だけ作られている、よりクリアで繊細な香りのウォッシュド(水洗により果肉を除去する方法)の逸品をご用意しました。

ヴェルディは初めてゲイシャ種を販売したのは、今からもう10年以上前で、その当時は「芸者と何か関係あるの?」とよく聞かれました。

そんなゲシャヴィレッジは、どのようなところにあるかと言うと、エチオピアの中西部に位置する旧イルバボール州(1995年に民族ごとの州編成に伴い東西が分かれた)現オロミア州の険しい山奥にあります。

私がエチオピアへ行った折も、途中の道路コンディションションが非常に悪く、四輪駆動車でもタイヤが泥に埋もれて、周りの住民たちが総出で車を押して進むということがありました。

しかし、ゲシャヴィレッジへはそんなレベルではなく、農園からトラクターに出動してもらい、四駆車の推進力にプラスでトラクターのけん引がないと進めないというほどの悪路の奥にあります。

ゲシャヴィレッジ農園のあるゴリゲシャの森は、概ね標高が1900m以上の高さにあるため、常態的に霧が発生しており、 Misty Valley とも言われています。

そんなゲシャヴィレッジ農園は、8つの区画に分かれており、区画ごとに日照や風通し、シェードツリーとなる木の茂り具合などが違うため、各々の区画ごとに異なる品種が植えられています。

ゲシャヴィレッジ農園で栽培されている品種は以下の3つ。

● Gori Gesha

ゴリゲシャの森にちなんで名前が付けられたゲイシャ種。

耐病性、収穫時の生産性、熟度などのバランスが良い(と言っても、他品種より生産性は悪い)のエチオピアにおけるゲイシャのスタンダード。

● Gesha 1931

ゴリゲシャより糖度が5%ほど高めながら、成長のスピードや熟す速度など収穫時の生産性は悪く、より高値がつくものの生産量は少ないゲイシャ種

● Illbabor Forest

JIMAの農業調査局がイルバボールの森で発見した品種(74110 と 74112)の中でも耐病性に優れた株を掛け合わせて作った品種。

もともとは、原生種だったが交配により糖度が増し、素晴らしい風味を持つ品種となった。

2020年にヴェルディで販売したところ、30キロが1週間持たずに売り切れるほど、いまだに「イルバボール、もう入らないの?」と聞かれる伝説的美味しさの珈琲。

今回の豆は、ゲシャヴィレッジの中でも北部に位置するShaya 区画で作られている Gori Gesya のウォッシュドを仕入れました。

Shaya 区画の名前は、ゲシャの伝統部族メアニット族の酋長の名前からとられています。

標高は1926~2011mと非常に高く、北に向かって傾斜した山の斜面で作られています。

そのため高いシェードツリーは少なく、刻々と角度が変わる日光を浴びてスピーディーに熟度が増していったチェリーをウォッシュドで精選しています。

エチオピアにおいて、ここまで細かく栽培地域が分かっているものは非常に稀です。

ぜひこの機会に本家本元のゲイシャをお楽しみくださいませ。

※ 今回の画像・資料は、Zephyr Japan CEO 橋本様から頂いたものを使わせて頂いています。

知らなくてもいい珈琲の話-その22【コーヒーの品種-6】

2021年7月4日 

前回に引き続き、ブルボン種について書いて行きます。

今回も、まずはブルボン種の非常にアバウトな系譜を載せておきます。

【イエローブルボン】

● 由来

イエメンよりレユニオン島(旧ブルボン島)へ伝搬した「ブルボン種=レッドブルボン」とティピカの中でも熟すと黄色くなるもの(アマレロ デ ボッカツ)が自然交配してできたものと言われる。

● 風味

マイルドで飲みやすく、風味特性は良い。

レッドブルボンよりも甘みが強いとも言われるが、品種の問題なのか農園などの管理の問題なのかは不明。

● 木および豆の特徴

ティピカよりも2~3割多く収穫できるが、他の高生産性品種と比べると、収穫量は少な目。

実のサイズは比較的小さめ(レッドブルボンも同様)で、スクリーン16以下がメイン。

熟すまでのスピードは速め。

【ピンクブルボン】

● 由来

他品種との自然交配、または突然変異と言われているが、正確には不明。

熟すとピンクっぽいオレンジがかった赤い色になる。

● 風味

他のブルボン種とは風味の面で大きく違い、浅煎りだとゲイシャに似た特徴を持つが、ゲイシャと比べると実が硬いため、非常に酸味が強く出てしまう。

中煎りの後半まで焙煎を進めたほうが飲みやすいが、ゲイシャっぽさは失われて、独特のコクと甘みを楽しめる。

ゲイシャの場合、ここまで焙煎を進めると完全にキャラクターが損なわれるので、そういう面ではやはりブルボンと言える。

【モカ】

● 由来

レユニオン島由来のブルボン種の突然変異と言われているが、ブルボンとは形状や風味が違うことから、イエメンから渡った中の別品種ではないかという説もある。

現在は、マウイ島で栽培される「マウイモカ」と一部ブラジルでも生産されている。

● 木および豆の特徴

非常に小粒で丸っこい。

ヴェルディでも一度販売をしたが、小さなピーベリーという感じで、ブルボンというイメージは全くない。

樹高は低く、さび病には強いが生産性が非常に低いため、ほとんど栽培されていない。

● 風味

風味は良くて、マイルドでクリアで甘みもある。

標高が低いところでも、高いカップクオリティーを発揮できる豆。

【カツーラ】

● 由来

ブラジルのミナスジェライス州で発見されたブルボンの突然変異種。

1910年に確認されているが、正式にカツーラ(カツゥーラ)種として世に出たのは1935年頃。

● 木および豆の特徴

樹高は低く、非常にコンパクトな木。

元の品種よりも小型化した「矮小種」と言われる。

しかし、生産性は高く、ティピカの2~3倍の収穫量を誇る。

一方で、非常に土中の栄養を要するため栽培にはケアが必要とされ、年間降雨量も2,500~3,000mmは必要とされる。

生産性が高いため、人気の品種ではあるが、さび病に対する耐性が低く、いったん病気が流行り出すと壊滅的な影響を受ける品種でもある。

● 風味

ブルボン直系だけに、風味特性は優れおり、標高が高くなるほど風味も良くなる。

一方で、標高が高くなると、生産性が落ちてくるので、高生産性品種としての優位性が落ち、さび病のリスクと天秤にかけると、難しい選択を余儀なくされる。

● 一言

ブルボン直系の高生産性品種ということもあり、他品種との交配が非常に活発に行われている品種。

カツアイ(カトゥアイ)やカチモールといったハイブリッド品種の元になっている。

カツーラも、熟すと黄色くなる「イエローカツーラ」があり、ブラジルの中でもマッタデミナスとエスピリットサント州の州境あたりの高地でよく栽培されているが、現地では「イエローカツーラ」と言わず、そのあたりの地名から「イエローカパラオ」と呼ばれている。

実際、遺伝子的にはイエローカツーラとイエローカパラオは若干違うらしい(現地の人談)

【ヴィジャサルチ】

● 由来

正確な記録がないので不明だが、1920年~1950年の間あたりに、コスタリカで発見されたブルボンの突然変異種。

コスタリカのアラフェラ州(首都・サンホセにほど近い場所)の北西部にある「サルチ」という町で発見されたことからヴィジャサルチ(ビジャサルチ)と命名された。

● 風味

ブルボンのフルーティーさを持つ良好な風味。

● 一言

高地での栽培に適しているが標高1,200~1,500mmでも良好な風味を出せることから、コスタリカ国内では栽培が広がったものの、病害虫への耐性が低いことから今では下火となっている。

【パーカス】

● 由来

1950年頃、エルサルバドルのサンタ アナにあるアルベルト・パーカスという人の農園で発見されたブルボンの突然変異種。

● 木および豆の特徴

カツーラと同様に、木がコンパクトな所謂「矮小種」の特徴を持っている。

生産性は通常のブルボンより高いものの、カツーラほどではない。

しかし、低地での栽培に適しており、干ばつなどにも強く、栽培される土が多少肥養さを欠いても育つ特徴がある。

同じ矮小種でも、土中の養分が多く、2,500~3,000mmの降雨量を必要とするカツーラとは逆の特性を持っている品種。

● 風味

ブルボンの特徴をしっかりと受け継いでとても良好な風味。

● 一言

エルサルバドルのコーヒー研究所で、優良種(同じ品種の中でも特に優れたものを選別する)の選別が重ねられた結果、現在でもエルサルバドルの栽培品種の25%近くを占めるシェアを持つ。

ただ、小粒であることから、エルサルバドル以外の国では、ティピカの突然変異で大粒の品種「マラゴジッペ」と掛け合わせた「パカマラ種」が多く栽培されている。

来週は、ブルボンのハイブリッド品種について説明します。

知らなくてもいい珈琲の話-その21【コーヒーの品種-5】

2021年6月27日 

今回は、ティピカ種と並ぶアラビカ種の代表格「ブルボン種」について説明します。

まずは、ものすごく大雑把なブルボン種の系統図から。

「ブルボン種」の【ブルボン】は島の名前からきています。

そのブルボン島とはどんなところなのかから説明しなくてはならないでしょう。

ブルボン島は、現在「レユニオン島」という名前になっています。

ここは、フランス共和国の海外県という位置付で、実質的にフランスの領土と言えます。

アフリカ大陸の南東にある島で、マダガスカル島の東、面積は2,512キロ㎡なので、沖縄の二倍程度の広さです。

現在は、人口86万人ほどですが、1507年にポルトガル人がこの島を発見した当時は無人島でした。

その後、1640年にフランス人が上陸してフランス領を宣言。

1642年にルイ13世が、当時の王朝の名称(ブルボン王朝)から引用し、「ブルボン島」と名付けました。

1665年には、フランスの東インド会社がインドとの輸出入における中継地として重用したことから植民を開始します。

1715年頃には、イエメンからコーヒー豆が伝わり、コーヒー栽培が盛んになりますが、その後サトウキビへと主要産業が移り、製糖がブルボン島の重要産業となりました。

しかし、その後フランス革命による王朝の終焉に伴い、「レユニオン島」に改名されます。

1806年には、皇帝ナポレオンにちなんで「ボナパルト島」と改名しましたが、ナポレオン戦争が終結し、1814年にイギリスがこの島を占領したことにより、再び「ブルボン島」に改名されました。

しかし、1848年フランスの2月革命により、再び「レユニオン島」に改名されて今に至ります。

時の政権によって何度も名称が変わった島ですが、この島の産業も1700年代当初の珈琲栽培から、トウキビ栽培へと移り変わり、アラビカ種における2大品種の片割れとも言える「ブルボン種」、その名称発祥の地では、極僅かの栽培になっています。

しかし、その子孫たちが現在の世界のアラビカ種をけん引しているのです。

来週からは、個々の品種について説明してまいります。

知らなくてもいい珈琲の話-その20【コーヒーの品種-4】

2021年6月13日 

前回に引き続き、今回もティピカ系の豆についての説明です。

今回も、ものすごくアバウトなコーヒー系統図の中からティピカ系の部分を載せておきます。

前回書いた「ジャワ」や「マラゴジッペ」は、単体としても取り扱われます。

しかし、両品種とも近年土着による変異や交配によって、より注目されていることから、2品種だけを詳しく書きました。

ジャワ種についていえば、近年「ジャバニカ種」がその風味特性から脚光を浴びて、コンテストなどでも上位入賞を果たすなど人気が出てきています。

また、マラゴジッペは、パーカス種と掛け合わせた「パカマラ種」が、中米を中心にCOE(カップ オブ エクセレンス)の入賞品種常連になるなど、目にする機会の多い品種でしたが、今回は比較的マイナーな3種についてさらっと説明いたします。

【ケント】

● 由来

インド南西部マイソール地方で発見されたティピカの突然変異とも他種との自然交配とも言われている品種。

1920年頃、マイソール地方にあったロバート・ケント氏が所有するドッデングーダ農園で発見された。

さび病に強いことから、発見から20年ほどはインドの中で人気品種として広がったが、近年はタンザニアを中心に栽培されている。

● 風味

マイルドで飲みやすいが、比較的固い豆なので中煎りだと個性を活かしにくい。

一方、深く煎っても味が崩れにくく、甘みを伴ったボディ感が増す。

● 雑ネタ

インドのマイソール地方へコーヒーの木が渡ったのは、1600年ごろにイスラムの巡礼者ババ・ブーダンが持ち出したものと言われていますが、1658年にはオランダがイエメンから持ち出した苗木を当時東インド会社が支配していたスリランカへ移植し、そこから200年近くスリランカでもコーヒー栽培が盛んにおこなわれました。

しかし、この1658年から始まったスリランカでのコーヒー栽培が、近年あまり大きく扱われないのは、1860年代にスリランカとインド(南西部)で猛威を振るったコーヒーの病気「さび病」により、両国のコーヒー栽培は壊滅的な被害を受け、特にスリランカではほとんどコーヒー栽培が途絶えてしまったことにあります。

そして、コーヒーの木がほぼ全て枯れてしまったところに、こんどは紅茶の栽培が始まり、インドとスリランカはコーヒー栽培の国から紅茶栽培の国へと変貌を遂げました。

そんな、さび病に対する痛い想いがあったことから、さび病に耐性のあったケント種は、発見当時のインドで人気を博しました。

そして、スリランカではコーヒー栽培が本当に小規模なものになったのに対し、インドでは病害虫に強い「ロブスタ種」の生産が盛んになりました。

ケント種とロブスタ種がインドで人気を得たのは、「さび病対策」という共通の優先事項があったからと言えるでしょう。

【サンラモン】

● 由来

1930年頃、コスタリカ西部のアラフエラ州にある、人口10,000人ほどの小さな町、「サンラモン」で発見されたティピカの突然変異種。

● 木および豆の特徴

樹高が高く、枝と枝の間隔が他のティピカ系と比べて狭いため、見た目クリスマスツリーのような、コンパクトにぎゅっと詰まったように見える。

チェリーは小ぶりで生産性は低い。

高地栽培に適していると言われているが、サンラモンの標高は1,057mとコーヒーの栽培地としては高い部類に入らないのが面白いところ。

生産性が良くないため、広く栽培されているというより、パナマやホンジュラス、グァテマラの一部などで細々と栽培されている品種。

● 風味

とても甘みが強いのが特徴。

もし、生産性が高かったら、多くの農園で栽培されるのではないかと思われるが、逆に生産性が高かったら、こんなに甘みは出ないかもしれないとも言われている(誰が言っているのか知らないが)

【パチェ】

● 由来

グァテマラで発見されたティピカの突然変異種

● 木および豆の特徴

樹高は中程度で、豆は比較的小粒。

● 風味

とてもマイルドで、控えめな酸味が特徴。

● ヴェルディでの取り扱い

開業当初から扱っている「グァテマラ・アンティグア」は、主にブルボン種ですが、その年のグァテマラを決めるためにカッピングして、より良いものを選んだとき、産地情報の詳細を見ると「品種:ブルボン、パチェ」と記載されていることがあります。

あくまで風味で選んでいて、たまたまパチェが入っていたということになるのですが、恐らくブルボンの特徴を崩さず、むしろより引き立てる役割を果たしているのではないかと思います。

【スマトラ】

● 由来

インドネシア、スマトラ島で栽培されるティピカ種。

インドネシアでは「バーゲンダル」と呼ばれている。

従来のティピカに比べると、生産性が高くさび病への耐性も高いとされる。

1908年にインドネシアで猛威を振るった「さび病禍」を生き残ったティピカとも言われている。

● 雑ネタ

ティピカの系統図に入れておらず、由来の部分でも歯切れの悪い書き方をしていますが、それには私なりの理由が3つあります。

1,ブラジルなどでは、「ストロング・ティピカ」と言われており、変異種と言うべきか、土着のティピカと言うべきか悩むところ。

2, スマトラ島(マンデリン)は、他の生産国とは違う「スマトラ式」という精製方法をとっており、他のティピカ種と風味の違いを単純に比較できないため、豆の風味なのか精選方法による風味の違いなのかを明確にできない。

3, マンデリン栽培地域は、小規模・零細農家の集まりで、品種を純粋に単一に管理するという概念に乏しく、本当の意味での「スマトラ種」がどの程度存在しているのかどうかが掴みにくい。

そのような事情で、私としてはあえて「スマトラ種」を外していますが、マンデリンを仕入れるときによく書かれている「スマトラ種」の豆は、実に魅力的で強いキャラクターを持ったものです。

ただ、上記のように、それが本当にスマトラ種の風味なのか、精選方法による違いなのか、あるいは「スマトラ種」と書かれていても、多品種との自然交配が行われているものなのか、さらに零細農家のかき集めになってしまうことから、本当にスマトラ種がどの程度入っているのかが不明なのが【マンデリン】です。

それもマンデリンの魅力でもあり、風味・品質を高い水準で維持することが難しい原因でもあります。

あまり「さらっと」にはなりませんでしたねぇ。

次回からは、ブルボン系について書きたいと思います。

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