ヴェルディは、開業当初バッハグループとして営業していたので、生豆の仕入れは全てバッハからであった。
生豆の知識を持たなくても、産地のことをよく知らなくても、必ず良い豆を仕入れられるという点では良かったのだが、同時に自分が選んで良いものを仕入れるということはできなかった。
ある意味、20年前は豆の仕入れルートも限られており、月間100キロも焙煎しないような超零細焙煎店が独自仕入れするなんて無理な時代だった。
時は流れて、今や月間100キロ焙煎している自家焙煎店の方が比率的には少ないかもしれないというほど、超小型焙煎機で一日数キロしか焙煎しないというお店が増えている。
そして、そんなお店が成り立つのは、小分け小ロットで生豆を販売する業者が増えたからに他ならない。
が、私の経験則から言うと、ある程度のロットを購入できないと、安定して良い豆を仕入れることは難しいというのも事実。
現在ヴェルディは、主要な豆については年間契約で数十袋を産地出港前に契約して仕入れているので、国内には出回らない豆や、同じ産地・同じ農園(精選所)のものでも、より良いものを仕入れられるようになってきたが、まだまだ上には上が多数いるので、本当に最上のものだけを仕入れるには、もっと焙煎量を増やして多くのロットを確保できるようにしなくてはと常々感じている。
そんな中でも、ヴェルディのような中途半端に大きくなく小さくない焙煎屋だから仕入れられる豆もある。
たまに電話がかかってきて「続木さん、掘り出し物があるんだけど、3袋だけだから全部買ってくれない?」と言われて、すぐに内容をメールでもらい、即買い付けといったことがある。
電話口で詳しく話を聞くと「〇〇農園(有名農園)のものだけど、一般に出回っているのではなくて、そこのセレクトロットが3袋だけ余って、まとめて買ってくれるところを探しているんですよ」といった具合。
要するに、大手さんだと3袋なんて少なすぎるし、月間100キロも焙煎しないところだと、3袋買ったら使い切れない。
つまり、ヴェルディ程度のサイズがちょうどよいから電話がかかってくるということなのだと思う。
生豆の業者のカタログを見ると「COE入賞暦のある名門農園○○農園の豆、カッピングスコア85点」なんて書かれているのをよく目にするが、名門農園だから美味しい(良い豆)とは限らない。
100のうちの5だけスペシャルロットを作って、親密な取引先に売り、残りのうち、まずまず良い45を「スペシャルティ」として、そこそこ高価な値段で一般に売り、ちょっと良くない(汎用なもの)50をちょっと高価に売るための文言が「COE入賞暦のある名門農園」という台詞になったりするから恐ろしい。
実際に、同じ農園(精選所)へ行って、裏に回って見てみると、こんな風に分けられていることがある。
有象無象のチェリー
そこそこまとまっている豆だけど、ちょっと収穫が早かったかな?というものが大半のチェリー
完熟比率が最も高いチェリー(でも、未熟なものも散見される)
し視察に行って、収穫しているところを見ると、だいたいは私たちが見る限り良いものしか収穫していない。
が、裏に回って見てみないと、本当のところどうなのかは分からないわけで、こうして違う容器に入れているということは、やはりロットとして甲乙丙を作っていると考えるのが妥当だと思う。
そういう光景を目にすると、名門農園とか、COE受賞歴といったものは、あまり役に立たず、やはり仕入れる人と農園の信頼関係が重要だと思ってしまう。
そんなわけで、たまにかかってくる掘り出し物電話。
私が「保留」と言ったら、すぐに他に流れてしまうので、仕入れる人を信じて即断即決するしかない。
今日もかかってきて、思わず購入してしまった。
来月あたり、超限定で出てくるかも。
楽しみでもあり、恐ろしさでもあり。