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カフェ・ヴェルディの気まぐれ日記

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2025年01月

帝王とSNS

2025年1月17日 

一昨日の日記「クラッシックとコーヒーと」で書こうと思っていた内容が、書いているうちに違う方向へ行ってしまったので、今日は改めて一昨日に書こうと思っていたこと。

私が子供だった頃、レコード店へ行くと作曲家はベートーヴェンであれモーツァルトであれ、要するに作曲家が誰かは問わず、一番たくさん目についた指揮者は「ヘルベルト・フォン・カラヤン」だった。

もちろん、カール・ベームだとかブルーノ・ワルターといった指揮者のレコードも目にはついたが、少なくとも小学生が知っている作曲家のレコード探すと、ほとんどの曲にカラヤン指揮のものがあった。

ヘルベルト・フォン・カラヤン、世界最高のオーケストラの一つであるベルリンフィルの常任指揮者で、フルトヴェングラーが作り上げた名門オケの名声を不動のものにした人物であり、クラッシックの世界におけるレジェンドの一人で、「帝王」と呼ばれるほどの名指揮者である。

が、同時期の指揮者たちと比べて、そこまでずば抜けていたかと言われると、曲によってはバーンスタインの方が良かったり、クライバーの方が圧倒的に凄かったり。

演奏を聴き比べると、カラヤン以前の人たち、トスカニーニやフルトヴェングラー、アーベントロートといったSP時代の名指揮者たちの演奏を超えるものが見当たらないということもある。

が、そんなことを超越してカラヤンは帝王と呼ばれ、存命中はクラッシック界の頂点に君臨し続けていた。

なぜか?

1950年代後半、SPの時代からLPへと移り変わる中、カラヤンは他の人と比べても圧倒的な質量でレコーディングをして行った。

デジタルレコーディングの技術ができるや否や、他の人に先駆けて、既に録音したものも再びデジタルレコーディングで録り直すなど、積極的にレコーディングをして、他の指揮者とは比べ物にならないほど多くの録音を行ったわけである。

この量にモノを言わせ、音楽業界(レコード業界)のシェアを独り占めにするという手法、よくよく考えるとコンビニが近くに同じ店があろうと出店する、同じドラッグストアが徒歩圏に複数軒ある、という戦略と同じことを1950年後半から彼は行っていたように思う。

ただ、いかに帝王カラヤンと言えども、評論家から辛辣なコメントをされた録音もあったし、正直他の指揮者の方が面白い演奏も多々ある。

が、録音の数が多ければ良い評価も良くない評価も含め、ともかく多数の評価が世の中に出回り、多くの人がそれを目にすることになる。

すると、レコードを買おうとしたとき、音楽誌などを見たら、どの曲であれ必ずカラヤンの評価は載っているから、評価のついていないレコードではなく、評論家が何かを語っているレコード、つまり、カラヤンのレコードを選択する可能性が高くなるわけである。

私の場合、例えばシューマンのピアノコンチェルトをリパッティと録音した若きカラヤンの演奏は、この曲のベストと言っても良いと思うし、オペラとしてではなく、ソリスト含む歌手も楽器の一つとみなして聴いた場合の蝶々夫人は、カラヤンでしか成しえない素晴らしい録音だと思う。

が、一つ一つの曲を考えたとき、カラヤン以上に感情移入できる指揮者・オケの演奏は多数あり、結果的に私の持っているCDの中でカラヤンが占める割合は、かなり低いものになっている。

さて、最近のコーヒー業界を見渡すと、SNSなどでめちゃくちゃ有名になっているお店が、必ずしも高品質なコーヒーを出しているかと言うと、正直疑問の余地があるように感じる。

しかし、戦略的に、場合によっては金銭を払って有名インフルエンサーに取り上げさせることで、多くの人の目に留まり、全くの駆け出しであっても瞬く間に多くの人に知られ、有名店になってしまうということが少なくない。

有名インフルエンサーというのも専門家ではなく、フォロワー数が多い人なので、専門的知見に立って物事を評価しているのではないため、目には留まるけど味についての本当のところは保証の限りではない。

でも、多くの人がソレを見て、ソレを購入して、右に倣えでSNSにあげることで、何となくソレが世の中の主流になってしまう。

さらに、最近は雑誌など紙媒体のメディアでさえ、自分で調査して掘り出すのではなく、SNSなどで調べて頻繁に取り上げられている店を有名店として掲載するから、その店の人気に拍車がかかる。

しかし、そういったSNSや雑誌と距離を取って自分の味覚で判断していったとき、本当に美味しいコーヒー店というのは、実はあまりSNS上で有名な店ではないところの方が多いことに気付く。かも。

と、こういった現象を見ていると、昔と違って今はSNSの時代、昔は本当に質で勝負されていたのに今は・・・と嘆きたくなるかもしれない、が、結局カラヤンとグラムフォンがとった戦法は、現代のSNS戦略と何ら変わらない。

レコード店へ行くとカラヤンだらけだから、カラヤンで聞いておけば良い。

SNSにたくさんあげられているから、それを飲んでおけば流行に乗り遅れない。

現代人も、実は1950年代と形を変えて同じことをやっているんだなぁ・・・と思いつつ、今日もカウンターでお客様と「メンゲルベルクはすごかった」とか、「チェリビタッゲはスローなのに、全く緊張感が途切れない」なんて会話をしている私などは、へそ曲がりなのかもしれない。

ただ、カラヤンを出しにしてしまったが、私はカラヤンの演奏を生で2回聴く機会に恵まれた中、やはり生演奏でのカラヤンと言う人の芸術性は至高のものがあったこと、各々の曲に対してオンリーワンやベストワンではないが、全てにおいて深い造詣があったことは否めない。

そうしてみると、カラヤンで聴いておけば間違いないというのは、間違いとは言い切れないことは書いておきたい。

願わくば、現代のSNS社会においても、本当に良いものが、きちんとセレクトされてSNS上を賑わせる世の中であればいいなぁ・・・

無理だろうなぁ・・・

新品種

2025年1月16日 

メキシコ・アナエロビックは、おかげさまでご好評の中残り本当に僅かになっており、髙島屋S.C.店ではすでに売り切れとなりました。

下鴨、北白川ともに残り数百グラムなので、お召し上がりになりたい方はお早めに。

そして、メキシコの次は何かというと、恐らく京都では初となる新品種がお目見え。

その名も「セラード ヴァリエダード ノヴァ」

ブラジルのセラード地域で開発された新品種です。

この品種は、コーヒー2050年問題に対応すべく研究開発されたものです。

コーヒー2050年問題とは、2050年には地球温暖化の影響で、今と比べてコーヒーを栽培できる地域が半分程度になるのではないかとされている問題です。

私も視察してきた他の生産国では、だんだん標高の高いエリアが主要生産地域になっていたり、今までアラビカを作れていた低地エリアには、ロブスタの中でもグレードの高いファインロブスタに植え替えるといったことを検討している国もありました。

エチオピアなどでは、これまで2,000メートルあたりで最上級クラスだったものが、今や2,300~2,400mのエリアも主要な高度の生産エリアになっています。

しかし、ブラジルの生産エリアは標高がそんなに高くないので、高度で逃げることができません。

例えば、グァテマラの場合最上級グレードのSHBは、標高1,400m以上のものにつけられるグレードですが、ブラジルの場合標高800m以上でスペシャルティーと呼んでよいとされていて、多くの農園は最高標高エリアでも1,300m前後しかありません。

世界最大の産地ブラジルがコケたら、コーヒー市場そのものが大変なことになります。

そんなこともあり、ブラジルでは高さに逃げられないため、品種改良で何とか温暖化に立ち向かおうとしており、この新品種は量産化の目処が立った第一号となるものです。

この新品種、アラビカでもロブスタでもない母体品種である「ユーゲニオイデス」と「オバタン」という品種を掛け合わせたもの。

オバタン=(ビジャサルチ×ハイブリッドティモール)×カツアイ

ちなみに、ビジャサルチ×ハイブリッドティモール=サチモールという品種にあたり、サチモールにカツアイを掛け合わせたものがオバタンになります。

サチモール自体も、ブラジルで研究開発された品種なので、ある意味ブラジルの開発品種に、アラビカの基となったユーゲニオイデスを掛け合わせたもので、これだけこねくり回したら、どんな味になるのかと思っていたのですが、想像以上にバランスよく、非常に飲みやすいコーヒーになりました。

以前、一度この新品種を試飲したときは、焙煎度合いが中煎りあたりだったこともあってか、非常に渋みがあり、正直こんなのがコーヒーとして出てきても飲みたくないと思ったのですが。中深煎りにすることでクリアで甘みの感じられるものになりました。

北白川の山下は「パプアニューギニアに近い味」と表現していました。

そんなわけで、全くの新品種「セラード ヴァリエダード ノヴァ」が本日より通販でもお求め頂けるようになりました。

こちらも限定販売。

よろしければ、近未来のブラジル産コーヒーの風味を時代を先取りしておためしくださいませ。

クラッシックとコーヒーと

2025年1月15日 

昨年は、アントン・ブルックナー生誕200周年ということで、ブルックナー関係の書籍やCDの再販などが多くあり、私もいくつか聴き比べをする機会があった。

本当は、カラヤンが振る9番の66年盤、75年盤(ともにベルリンフィル)と76年のウィーンフィルライヴ録音盤を聴き比べたかったのだが、残念ながら66年盤が手に入らず断念。

そこで、たまたま中古で入手できた8番の57年盤と75年盤を聴き比べてみたのだが、当然と言われればそこまでだが、同じ指揮者とオケでも微妙に違っている。

どちらが良いというわけではなく、そのときカラヤンがスコアをどのように解釈していたのか、演奏を重ねるうちに変化しても然るべきなのであろう。

同じ交響曲でも、指揮者が変われば全く表情が変わってくるもので、他に私が持っているギュンター・ヴァントやオイゲン・ヨッフム、ロブロフォン・マタチッチなど(ヨッフムとマタチッチはLP盤)同じ曲でもこんなに違うのかと、聴いていて面白い。

コーヒーも同じで、全く同じ豆(生産国・農園・ロット等が全く同じもの)でも、焙煎する人が違うと、味わいも全く違うものになる。

その豆に対する見方が違うと、当然焙煎の仕方も変わってくるので、結果音楽における演奏、コーヒーにおける味は、指揮者や焙煎士がどう解釈して、それを具現化しているかということだと思う。

もちろん、「音楽(スコア)の解釈」「豆の解釈」というものを具現化するには、それができるだけの知識と技量が必要なわけで、中学生の部活オーケストラなんかが、演奏するとなったら解釈以前に楽譜通りに演奏することで精いっぱい。

コーヒーの焙煎も、それなりの経験と技術がなかったら、焼き色をつけるだけで精いっぱいなので、自分なりに豆を解釈して、それを具現化するというレベルには達しないものだと思う。

恐らくカラヤンに限らず、世の一流と言われている指揮者たちは、作曲家がどのように考え、どのような意図でスコアを書いたのかを追求したうえで、自分なりの解釈とスコアをどのように操り、オケをどのように鳴らすのか考えて、初めてタクトを振れるのであろう。

場合によっては、オケの特徴によって指揮も変わるかもしれない。

そうしてみると、やはりコーヒーも、産地はどのような気候風土で、どのような栽培、精選がされているのか、さらに、コーヒーの品種について、その品種の特徴や、できた経緯について、深く探りながら豆と向き合って、初めてその豆の解釈という域に達するように思う。

そして、それを具現化するための焙煎機が音楽で言うオーケストラと同じ。

各々の焙煎機の特徴によって、焙煎の仕方も変わってくる。

私が学生時代に、何か文章を書くときは、だいたい「今回はどの曲調にしようか」と考えていた。

例えば「今回は運命」と思ったら、最初にジャジャジャジャーン!とインパクトのある言葉で出だし、途中少し静かに進めつつ、最後は歓喜の内容を伴ってアップテンポに終結する、とか。

「悲愴」なら、暗く静かに立ち上げて、考えさせるよう仕向けつつ、普通ならワルツになりそうなところを変則的な5拍子という不思議なリズムを作りだし、悲しげながら美しい和音で魅せつつ、最後は消え入るような余韻で終わる、みたいに。

学生時代の私は、文章の書き方、持って行き方において、自分の好きな曲をメロディーではなく言語にして書いていたように思う。

で、60近くになって、何をしているかと言うと、結局は頭の中で豆をスコアに置き換えて、【産地・農園のテロワール=作曲家の思いや時代背景】や【品種の特徴=各楽器の音色】を考えて、演奏ならぬ焙煎をしているんだなぁ、と最近感じている。

そして、あるときはシングル(ピアノソナタだったり、無伴奏のヴァイオリンやチェロソナタだったり)、あるときはブレンド(オーケストレーション)だったり、個人的にはブレンドにこそ面白みを感じたりしている。

そんなこんなで、ブルックナーを聴きながら、なんとなくクラッシックと焙煎の相関について思いめぐらせていた。

今年はショスタコーヴィッチの没後50年。

また、いろいろな録音が出てきそうな気もするので、いろいろと聴き比べられたらいいなぁ・・・と思う。

来週から

2025年1月13日 

今日は成人の日。

新成人の皆様、おめでとうございます。

そんな今日は、ものすごく波の荒いモーニングだった。

開店直後から9時頃まで、私はひたすらトーストを焼き続けるような状況。

このペースだと、トーストのパンがなくなってしまう・・・

と、思っていた9時過ぎ、満席だったお客様が全て引いてしまい、お一人の常連さんの貸し切り状態に。

すると、愛知県で喫茶併設の洋菓子店をされていて、ヴェルディの豆をお使い下さっている方がご来店。

お客様も少なかったので、けっこうゆっくりお話もできて、お見送りをしたとたん、再びピークがやってきて、11時前までノンストップで突っ走ったモーニング。

遠方からのお取引先様と、ゆっくりお話しするためのアイドルタイムだったのだろうか。

さて、昨日の日記にも書いた通り、現在限定販売中のメキシコ・アナエロビックは間もなく販売終了。

次は、コーヒー2050年問題対策品種となる。

水曜日に焙煎をして、早ければ水曜の夕方、遅くとも翌日からは通販を含む全店で販売開始予定。

豆は、けっこう丸くてコロっとしている。

小粒になるか?と思っていたが、スクリーンサイズ14以上はある感じ。

サンプルロースターでテストローストしてみた。

浅く焙煎したら、ちょっと渋みが強く出そうだったので、中深煎りの、やや中煎り寄りくらいに仕上げようと思っている。

昨年、ブラジル大使館で行われたセラードコーヒー30周年式典の折に試飲させてもらったときは、「正直、あまり美味しくない」と思ったのだが、今回テストローストしてみると、ブラジルとしてはアリな味。

他国のスペシャルティーコーヒーのようなフルーティーさはないが、「美味しい」「美味しくない」ではなく、近未来のブラジルのコーヒーがどうなっていくのか、四半世紀前に検証。

といった意味で、よろしければお試し下さい。

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