今朝はわりと暖かかった。
と言ったら語弊があるので・・・そんなに寒くなかった。
先週から日曜日は珈琲について、ちょっとだけ深めの話を書くことにして、次回はエチオピアの豆やトレーサビリティーについて書くと言ってました。
そこで、私がエチオピアへ行った折、あぜ道を走行中の車の中で聞いた話をメモしていたノートを読み返すと言うか、解読しながらどのように書こうか考えてみました。
その結果、そうとう話を端折っても正直1回や2回では終わりそうになかったので、これから何回かシリーズでエチオピアのことについて書こうと思います。
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さて、珈琲の生産国は多数ありますが、究極を言えば、ブラジルとエチオピアがあればなんとかなると私は思うのです。
ブラジルは言わずと知れた世界最大の産地、そしてエチオピアはアラビカ種誕生の地。避けては通れません。
そんなエチオピアですが、日本ではなぜか「モカ」という名称で取り扱われることが多い、と言うか、ほとんどのお店はエチオピア産の豆を「モカ」と呼んでいます。
しかし、モカはイエメンの港の名前で、スエズ運河開通前はエチオピアの豆とイエメンの豆が、モカ港から船積みされて運ばれていたことから、昔々はエチオピアとイエメンの豆を「モカ出港の豆」として取り扱われていました。
その名残かもしれませんが、イエメンの人からすると、自国の港の名前を他国の生産物につけさせたいとは思わないでしょうし、エチオピアの人からすると、どうして他国の港の名前で呼ばれなくてはならないと思うのではないでしょうか。
新潟県の魚沼産コシヒカリが欧米で「釜山」なんて呼ばれていたら、新潟の人は怒ることでしょう。
モカ以外で言えば、ブラジルのサントスも港の名前であって、「セラード」だとか「カパラオ」(マッタデミナスとエスピリトサントの州境近辺)といった産地詳細ではないのですから、「サントス」が味や品質を表しているものではないのは自明こと。今の時代港の名前で珈琲を呼ぶのはいかがなものかと思います。
さらに、日本の3倍もある国土のエチオピア内でも産地は多数あり、各々の特徴が違うのですから「モカ」とひとくくりにして良いわけがありません。
そこで、まずはエチオピア国内の産地についてお話ししたいと思います。
エチオピア国内での生産量を見ると、オロミア州(地図上の緑の部分)で全体の67.45%が生産されています。
そしてSNNPR(Southern Nations Nationalities and Peoples Region)=南部諸民族州(地図上のピンクの部分)が全体の30.52%を生産していますので、この2州だけでエチオピア全体の98%を生産していることになります。
オロミア州の中には【リム】【ジマ】【リケンプティ】【グジ】【ハラー】などの産地があります。
そして、SNNPRには、日本でも人気の高い【シダモ】【イルガチェフ】【カッファ】などが含まれていますが、シダモ(現地風に言うとシダマ)は2019年に州への格上げを要請、現在はシダマ州となっています。
また、イルガチェフやグジはシダモの一部と言われることも多いのですが、後に説明する ECXの管理上、以前はシダモの括りに入っていたため、シダモの延長線上に考えられていましたが、(下図の[旧シダモ地方]参照)地域的には、同一地区と呼ぶには無理があります。
そのエチオピアの産地分布は下のようになっています。
地域ごとに風味特性も違い、また精製方法も特色がでてきます。
● 現シダマ州
日本でも古くから有名な産地。
標高1,500~2,200mで、ボディと酸味のバランスが良く、上質なものはフローラルな香りが楽しめます。
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A : イルガチェフ
現在日本で最も人気のある産地。
標高1,750~2,200mで、ブルーベリーのような風味とフローラルな香り紅茶のような甘みが印象的です。
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B : グジ
近年人気が出てきた産地。
なぜか、グジの生産量よりも、日本で流通している「グジ産」の豆の量が多い不思議な豆。
そういう点からも、本当のグジの味はどこにあるのか分かり辛いが、ベリー系のフレーバーが強いのが特徴と言われています。
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C : カッファ
コーヒー発祥の地とも言われ、「カフェ」の語源ともされています。
ナッツ系の風味が強く、ボディはしっかりとしていますが、シダモやイルガと比べ華やかさには欠けます。
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D : ジマ
標高は比較的低く1,200~1,800m、ナチュラルのシェアはエチオピアでトップです。
ナチュラルフレーバーからくる酸味とボディのバランスが良いのが特徴です。
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E : リケンプティ
標高は1,400~2,200mで、日本で目にするものはG4(グレード4)が多いという印象です。
高グレードのものは、フルーティーさが特徴です。
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F : ハラー
標高1,500~2,200m、シダモに次いで日本でも人気が高い産地。
俗にいう麝香のような「モカフレーバー」が印象的でイエメンに近い風味を持ちます。
精製はナチュラルがメインです。
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G : ゲシャ
今や高級コーヒーの代名詞となった「ゲイシャ種」発祥の地。
ナチュラルで精製されます。
4輪駆動車では行くのも難しく、車の前を耕運機で慣らしながら進まないとたどり着けないほどと言われています。
次回エチオピアへ行った折は、ぜひ訪問してみたい産地です。
パナマ産のゲイシャと比べると、独特の香りは弱めですが、レモンティーのような風味が印象的です。
どうして自生していた地域より、他国のパナマの方が高品質なものになったかと疑問に感じる方もいらっしゃるかと思います。
ゲイシャ種は根が短く、また非常に多くの水(降雨)を必要とします。
また、パナマでもゲイシャを多く栽培しているボケテ地区はバル火山からの山麓、火山土の養分豊富な土壌であるため、原産国の自生地域より、むしろゲイシャ種には適していたものと思われます。
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こうして見ると、エチオピアの産地はどこも標高が高いことが分かります。
中米では標高でグレード付けをすることが多いのですが、例えばグァテマラなどは最高等級のSHBが標高1,350m以上と規定されています。
エチオピアで1,350mは最も低い地域のもの並です。
ただ、エチオピアは首都のアディスアベバから産地へ向かう道中、ほとんどが標高2,500m以上で、弱い人は軽く高山病にかかるほど。
こういう産地特製も他に類を見ない味わいに欠かせないものかもしれません。
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ここまででもずいぶん長くなってしまいました。
次回は、エチオピア産豆の流通についてお話しようと思ったのですが、その前に、様々なことの前提となるお国の事情などを書きたいと思います。
で、そんなエチオピア、ヴェルディでは3種類のエチオピア豆を販売しています。
よろしければお試しください。
う~ん、それにしても、このペースだと何回連載になることやら・・・
では、また来週。