昨日の夜話の会は、今までの中で最も雑談に近い内容だったような気がするが、逆にその分専門性が薄かったせいか、話の後の質問コーナーでは、非常に多くの質問を頂いた。
その中で、自分でも意識していなかったものの、ハッとさせられるものがあった。
パプアニューギニアの農園や輸出システムが非近代的であるということについて、これがもっと近代的になったら、よりクオリティーが安定するだろうか?という内容のご質問。
何も考えずに、思い浮かんだことをおこたえしつつ、やはりパプアは今のままの方が良いかもしれないと思ったこと。
昨年タンザニアへ行ったとき、TCB(タンザニアコーヒーボード)でタンザニアコーヒーについての説明を聞く機会をもらった。
ここでは、タンザニアコーヒーの生産地域ごとの比率や、輸出先のことなど、TCBの現地トップの方から、事細かく聞くことができた。
このとき、タンザニア北部のキリマンジャロエリアで作られているコーヒーは、ほとんどがブルボンかケント(インドで見つかったティピカの突然変異種)がメインと言っていた。
が、実際に農園で話を聞くと、最近植え替えたものや、新たに植えている木は、ほとんどが「コンパクト」だと。
コンパクトとは、現地で言われている品種のことで、一般には「カチモール」を指す。
カチモールは、ムンドノーボとハイブリッドティモールの掛け合わせなので、1/4はロブスタが入ったハイブリッド品種ということになる。
ただ、必ずしもハイブリッドが味的に劣るかと言うと、実は下手なティピカよりも風味特性が良いということもあるし、COE(カップ オブ エクセレンス)でも入賞するような豆もあるので、「ハイブリッド=低品質」ではないことは確か。
しかし、ヴェルディ開業当初のタンザニアと比べると、やはり風味が違ってきていることも確かで、現在限定珈琲として販売している コンゴ の方が、昔ながらのキリマンジャロの味に近いようにも思う。
ただ、TCBはブルボンとケントと公言しているのに、農家には新たに植えるものは生産性の高いカチモールを勧めているという矛盾も生じてしまう。
やはり、栽培の近代化や収益の最大化を図るようになったら、どうしても伝統品種よりも生産性が高く病害虫に強い品種へ移行してしまうということだろう。
一方、パプアニューギニアは、悪く言えば「遅れている」が、よく言えば「外部に染まっていない純粋さ」がるため、未だにティピカ種とアルーシャ種がメインになっている。
多くのコーヒーの木を見ていたら、それがティピカかハイブリッドか程度は区別がつくのだが、パプアの木は明らかにティピカ系。
生産性は悪いが、高生産性の木を植えていないのだから、現地の農家は比較対象がないので、これが普通と思って栽培を続けているわけである。
一方で、やはりハイブリッド系は、実のつき方(このときは、まだ開花状態だったので実はついていないが)がティピカに比べると多く、一本の木から採れる実の量も多くなる。
いろいろと考えてみると、もしかすると世界の生産国の中で、一番ティピカが残っているのはパプアかもしれないし、土壌のポテンシャルを考えると、パプアのティピカはものすごい可能性を持っているようにも思う。
そうしてみると、パプアの生産現場や輸出入を取り仕切る現場で近代化が進み、品質と輸出が安定したら、より良いコーヒーが手に入るように思う反面、そうなったら、一気にティピカの比率が下がってしまうかもしれない。
何となく、ティピカという個性は弱いが本当にコーヒーらしいマイルドコーヒーと言える品種がしっかり守られていくことと考えたら、パプアにはこのままでいてほしいような。
まぁ、消費国のわがままかもしれないが、ちょっと変な気分になった夜であった。